しかし、そこには「出る杭は打たれる」という裏承認社会の鉄則が立ちはだかる。うっかり自慢話でもしようものなら、四方八方から嫉妬の矢が飛んでくることも彼らは知っている。

Z世代こそ
究極の「ザ・日本人」

 その葛藤の中から生まれたのが、周囲に煙たがられない範囲で自らをアピールする「間接自慢」や「チラ見せ」という高度な技術だ。

 マーケティングアナリストの原田曜平はZ世代の特徴として、周囲の目を意識し、心証が悪くならない範囲で自己アピールすることを挙げ、「直接的で露骨な自慢をすると、噂や陰口が広がりやすく、周りから煙たがられてしまうので、それを避けるために『間接自慢』という手法が生まれた」と述べている(原田曜平著『Z世代――若者はなぜインスタ・TikTokにハマるのか?』光文社、2020年、95頁)。

 自分を高く評価している客のところへ上司を連れて行ったり、得意分野の話題へ巧みに誘導したりする。直接的な自慢を避け、あくまで「自然な文脈」を装って自分の有能さを
 悟らせる。あるいは社内チャットに絶妙なセンスの一言を添え、場の空気をコントロール
 することで存在感を示す。

 TikTok Adsが2019年10月から2020年3月に行った調査によると、「周囲の人と比べて、自分が浮いていないかいつも気になる」「人が自分をどう思っているかを気にする」「人と違う個性が必要だ」という回答が、Z世代は、その上の世代より数値が高い(TikTok Ads「Z世代白書」2020年6月)。

 彼らは共同体型組織のルールを誰よりも鋭敏に察知しているのだ。

 世間に流布している「ドライで無関心な若者」というイメージとは裏腹に、その内面では組織の掟と承認欲求という2つの力に引き裂かれながら、極めて繊細に自己をコントロールしている。

 Z世代こそ、空気に敏感で「出る杭」になることを最も恐れる、究極の「ザ・日本人」と言えるかもしれない。

 彼らは殻を破る存在どころか、むしろその殻を最も頑丈なシェルターとして使いこなし、共同体の中に静かに、しかし深く染みこんでいくのである。