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「さっさと殺せ!」「自分で死ね!」――在宅医療の現場で、50代夫婦が激しく言い争った。車椅子生活の妻は夜中に何度も夫の介助を必要とする一方、夫は睡眠不足で限界寸前。妻は「オシメもイヤ」「尿の管もイヤ」と拒み続けた。介護する側の負担と、される側の自由や尊厳は、なぜ衝突するのか。在宅医療の現場で起きた実例から、介護にひそむ「二律背反」を考える。※本稿は、医師で作家の久坂部 羊『欲張らない死に方 賢く老いるヒント』(筑摩書房)の一部を抜粋・編集したものです。
妻「さっさと殺せ!」
夫「自分で死ね!」
在宅医療で診ていた50代半ばの女性は、脊髄小脳変性症で、車椅子の生活だった。
プライドの高い人で、手足が自由に動かなくても、自分のことはできるだけ自分でしようとしていた。夫と2人暮らしをしており、昼間はヘルパーも来ていたが、夜は夫が介護をしていた。
この女性の問題は、夜間のトイレだった。車椅子から便器に移るときに、どうしても夫の手を借りなければならない。
それも1度や2度でなく、多いときには5回ほども排尿があるという。私は夜間頻尿を抑える薬を処方したが、さほどの効果は得られなかった。
夫は睡眠不足でイライラが募り、診察中でも私と看護師の前で言い争いをした。
「夜中に何べんも起こされたら、睡眠不足でフラフラになる」
「わたしも我慢してるのや。けど、どうしようもないから頼んでるんやないの」
「起こされる者の身にもなってみろ」
「トイレを我慢させられる者の身にもなって」
私は、「導尿カテーテル(尿道から膀胱に挿入するシリコンチューブ)を入れれば、トイレに行かなくてもよくなりますよ」と勧めたが、「オシッコの管を入れるなんて、ぜったいにイヤ」と拒絶する。







