団塊世代が続々と後期高齢者の仲間入りをするというのに、介護保険は今後、給付の抑制や自己負担増が必至。介護難民にならないためには、早めの準備が肝心だ。特集『最適な介護施設選び&老人ホームランキング』の#1では、人材や財源が不足するニッポンの介護の近未来を予測する。(ダイヤモンド編集部)
湯水のようにお金が使えなければ
フルコースの在宅介護は夢物語
要介護になっても最期まで住み慣れたわが家で、と願っている人は多いだろう。その願いをかなえるのは、家族とお金である。
高齢者の終活サポートを長年行ってきた黒澤史津乃さん(現OAGライフサポート・シニアマネジャー)が語る。
「在宅介護の限界は排せつです。赤ちゃんのオムツ替えと違って、高齢者の下の世話は家族もやりたがらないし、される方も嫌がる。かといって、オムツをパンパンにしておけないので、ヘルパーさんを長時間入れると、自費負担が増えてあっという間に月の費用が30万円を超えてしまう。それなら、20万円以下の費用で済む施設に移るというようなケースが多いですね」
介護保険は今後、給付抑制や自己負担額を増やす方向に話が進むのは必至だ。
それが現実となれば、所得水準によって負担増になる利用者が増える。湯水のようにお金が使えなければ、フルコースの在宅介護は夢物語で終わるだろう。
「在宅介護は崩壊寸前」と、業界関係者は口をそろえる。サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)などに併設される事業者を除くと、ホームヘルパーを確保できず、廃業する例が相次いでいるからだ。
ホームヘルパーは高齢化が進み、80代の現役も珍しくない。有効求人倍率は約15倍。1人の採用に15社が群がる異常事態が続いている。業界ではホームヘルパーを“絶滅危惧種”と呼ぶ。
なり手が少ないのは当然だ。将来のある若い人にとって、施設で働いた方が安定した給料が見込め、キャリアアップも期待できる。しかも、訪問介護は危険を伴う。
2022年1月、訪問診療先で医師が殺害されるという悲惨な事件が埼玉県内で起きた。この事件を受けて同県が行ったアンケート調査に、医師や看護師、ホームヘルパーの半数が暴力やハラスメントを受けた経験があると回答している。
埼玉県は警備会社と契約し、複数で訪問するための補助金を出すなどの対策を検討しているが、財源に余裕のない自治体ではとうてい無理な話である。
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