ウォーシュ氏Photo:China News Service/gettyimages

 米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げを開始すると、市場はすぐに心配し始める。「いったい何が壊れるのだろうか」と。

 2022年に始まった前回の利上げサイクルでは、「壊れた」ものの一つは地方銀行だった。シリコンバレー銀行などは低コストで集めた預金を低利回りの債券に投資していたため、利回りの上昇に伴う債券価格の急落を受けて資本が欠損し、顧客資金の流出につながった。そして、23年前半に小規模な銀行危機に見舞われることになった。

 だが、今の米国の銀行業界は、4年前とはいくつかの重要な違いがある。銀行は以前から保有している債券で数十億ドルの含み損を抱えており、利回りが上昇すればその損失がさらに拡大する可能性がある。しかし、銀行の規模や資本と比べたこうした債券の割合は縮小しており、ポートフォリオの中身も期間の短い債券にシフトしている。

 だからと言って、FRBが利上げを継続したり、長期債利回りが長期にわたって高止まりしたりすれば、銀行は無傷でいられるわけではない。だが、銀行を傷つける要因の多くは、すべての市場参加者に打撃を与え始めるような広範な経済的懸念だ。

 米連邦預金保険公社(FDIC)によると、米国の銀行は4-6月期時点で保有証券に関して3300億ドル(約52兆1000億円)弱の未実現損失を抱えている。一方、各行はここ数年間に資本を積み増してきた。FDICのデータによると、銀行のいわゆるティア1資本に対するこれらの損失の割合は、22年7-9期の33%超から、今年4-6月期には約14%に低下している。

 もちろん、債券価格は4-6月期以降も利回り上昇に伴い下落している。しかし、銀行がポートフォリオに組み入れている債券の残存期間が短くなっていることで、その影響は小さくなっている。期間の短い債券は利回りが変動してもその影響を受けにくいからだ。