買収で手に入るのは
「店」ではなく顧客接点

 トイザらスが持つ全国の店舗網は、ドンキにとって魅力的なアセットです。

 郊外のショッピングセンターにある大型店は、少子化の地域では重荷に見えるかもしれません。しかし、買収する側から見れば、自社が十分に届いていなかった地域や顧客への接点を、一気に手に入れられるとも言えます。

ANOBAKA 代表取締役社長/パートナー長野 泰和さん長野 泰和
ANOBAKA 代表取締役社長/パートナー

KLab株式会社入社後、BtoBソリューション営業を経て、社長室にて新規事業開発のグループリーダーに就任。その後、2011年12月に設立したKLab Venturesの立ち上げに携わり、取締役に就任。2012年4月に同社の代表取締役社長に就任。17社のベンチャーへの投資を実行する。2015年10月にKVPを設立、同社代表取締役社長に就任。KVPでは5年間で80社以上のスタートアップへ投資。2020年12月ANOBAKAを設立。

 ドンキは繁華街や駅前だけでなく、地方のロードサイドでも商売をしてきました。トイザらスの郊外店舗は、ドンキの出店網と競合するだけでなく、補完する可能性があります。

 PPIH側も、両社は強みとする顧客層が大きく異なり、それぞれの強みを補完できると説明しています。M&Aの価値は、買った資産を従来と同じ方法で使うことではありません。売り場、立地、顧客との接点を、自社の強みと組み合わせてどう再定義するかです。

 全店をそのままドンキに変える必要もないでしょう。トイザらスの玩具販売の強みと、ドンキの品ぞろえや売り場づくりを組み合わせ、新しい専門店をつくれたら、ドンキの看板では入りにくい商業施設にも展開できます。

 ただ、店舗を増やすだけでは成長しません。今回の買収でさらに重要なのは、「その売り場で誰に、何を売るのか」です。

ドンキが見ている
「推し活×玩具」の市場

 その答えの一つが、「大人向けおもちゃ」です。

 ここでいう「大人向けおもちゃ」は、性的な商品のことではありません。アニメやVTuberなどの「推し活」を楽しむ大人に向けて、好きなキャラクターを「買う」「自分で作る」「部屋に飾る」といった楽しみを味わうための商品です。

 例えばレゴは、『ハリー・ポッター』や『ONE PIECE』など人気IPを題材に、遊ぶだけでなく、組み立てて飾れる商品を展開しています。『ONE PIECE』シリーズにも、自宅に飾って楽しむディスプレイモデルがあります。玩具はすでに、子どもの遊び道具だけでなく、作品の世界を手元に置くための手段として使われているのです。