2023年10月、ジャパンモビリティショーで公開されたトヨタ自動車の次世代EVコンセプト「レクサス LF-ZC」。次世代EVの象徴として期待されたが、今年5月末、量産開発見送りが明らかになった Photo:ZUMA Press/AFLO
ホンダはCVCCエンジンで米国マスキー法を超える排ガス規制をクリアし、日産自動車は901運動から生まれた初代「プリメーラ」で欧州車を驚かせた。トヨタ自動車もハイブリッド車「プリウス」や燃料電池車「MIRAI」を世に送り出し、日本は世界をリードする技術を築いてきた。しかし今、OTA(Over The Air)、SDV(ソフトウエア定義車)、E2E(End to End)自動運転という新たな競争軸で苦戦している。かつて世界を席巻した日本メーカーは、なぜ後れを取ったのか。連載『志賀見聞録 自動車産業の半世紀とミライ』の第16回【ミライ編7】では、その背景にある「レガシーの呪縛」と復活への道筋を読み解く。(日産自動車元COO〈最高執行責任者〉 志賀俊之)
>>第1回【過去編1】「ゴーンさんが羽田空港で逮捕されたらしいです」(2018年11月19日)から読む
>>第6回【ミライ編1】ホンダがEV戦略見直しで「2.5兆円損失」を発表した日(2026年3月12日)から読む
日本車はなぜ世界をリードできたのか
米規制を超えたホンダCVCCエンジン
自動車産業に携わって50年。今なお、私は日本の自動車産業に大きな誇りを持っている。
半導体、家電、電池――。かつて世界を席巻した日本の産業がその面影もなくプレゼンスを失う中でも、自動車だけは世界の第一線で戦い続けてきた。
中国の電気自動車(EV)が世界市場で急成長している現在でも、日本車は世界シェア約25%を維持し、国別ブランドとして世界トップクラスの競争力を保っている。
私自身、若い頃にクルマの輸出を担当していたが、正直、海外のどのメーカーと競っても負ける気がしなかった。
もちろん、ドイツの高級ブランド車とは戦う土俵が違った。それでも同じ価格帯では、技術、品質、コストのいずれを取っても、日本車が間違いなく勝っていた。その競争力を支えていたのは、開発、生産、そしてサプライヤーまでが一体となって技術を磨き上げる、日本ならではのモノづくりである。その代表例を、改めて読者の皆さんと振り返りたい。
私が日産自動車に入社した1970年代、日本では米国のマスキー法(大気浄化法改正法)と同等レベル、あるいはそれ以上に厳しい排出ガス規制が導入された。各自動車メーカーは、その規制をクリアするために熾烈な開発競争を繰り広げ、日本は世界で最も排出ガスのきれいなクルマを生産する国となった。
そのマスキー法を世界で最初にクリアしたのが、ホンダのCVCCエンジンである。マスキー法を打ち出した米国では、ビッグスリー(ゼネラルモーターズ、フォード・モーター、クライスラー)が達成困難を理由に反発し、同規制の施行は延期された。その結果、米国メーカーは競争力を失い、日本メーカーは環境技術を突破口に世界へ飛躍していくこととなった。
私自身が今も非常に誇りに思っている活動がある。80年代半ばから始まった日産の「901運動」である。







