中野サンプラザ中野サンプラザ Photo:PIXTA

仕事を発注する企業が、受注側からの値上げ要請や工期延期を受け入れざるを得なくなっている。かつては相見積もりで取引先を競わせていたが、いまは見積書すら出してもらえないケースもある。建設・調達の現場で、なぜ発注側と受注側の力関係が逆転したのか。※本稿は、調達・購買コンサルタントの坂口孝則『ブルーカラービリオネア エリートより稼ぐ「奴ら」の正体』(幻冬舎)の一部を抜粋・編集したものです。

3年前に発注したのに
工事は予定どおり進まない?

「3年も前に注文しないとダメっていうんですよ。信じられますか?」

 石油精製の日本企業に勤めるマネージャーとの会話は、そんな一言からはじまった。氏は建設工事の受注者を探す仕事だ。受注企業に仕事を依頼したいのだが、まったく集まらない。これまでなら、せいぜい1年前の発注でよかった。

「どこもかしこも人手不足です。取引先のどこもベテランが一斉に退職して人材の供給に制約が出ている」と続いた。もちろん3年のあいだに設計などの準備がある。工程進捗を両社で進めるためだ。これまでならば3年先なんて予定不明だろう。

 しかし現在では3年先の大規模工事はリスクを負って先行発注しなければ、取引先とその人材を確保できない。「とくに現場での検査人材が確保できない、といわれる。機械に代替できない細かな打痕を検査する人材は、空きを待ってもらうしかない」と。

 見通し段階からリスクを負って発注するしかないのだ。

 それでも悩みは続くようだ。

「そうやって発注するでしょう。3年後になって工事がはじまる。それでも遅延するんです」。約束は守られない。

 私は「訴訟でもするのですか」と野暮な質問をしてみた。