これまでサプライチェーンの世界では「取引先選定」という言葉があった。これは文字どおり調達側が取引先を選定することだが、現在ではむしろ取引先側が買い手を選定するようになった。

「お客様は神様です」の
時代は終わりを告げている

 おそらく、20年ほど前、サプライチェーンに従事していたひとたちは、安価な労働力が無限に供給されると過信していたのではないか。しかし現在では、肉体的な実体をもつ労働力が、知的労働の価値を凌駕している。「お客様は神様です」といっていた時代から、「現場で働いてくれる作業者は神様です」へと移り変わった。

 日本経済新聞の2025年12月の調査では、大手や中堅の建設会社の実に7割が「2026年度内は大型工事を新規受注できない」と述べているという。準大手ゼネコンは委託企業を選べる立場にあり、採算の取れる案件だけを選んで受注している。つまり調達側が選ばれる側になった。

 委託企業だけの悩みではない。自社の労働者も集められない。このところ人手不足倒産、という聞き慣れない状況が増えてきた。普通に考えれば、人手が足りないのであれば、既存のぶんで仕事をまわせばいいはずだ。

 しかし、次々とひとが辞めていき、既存の人材すら確保できない。従業員退職型倒産ともいえる。最低限の仕事すらこなせずに倒産にいたる……。そうした人手不足での倒産企業数は、2025年度に441件と前年度比に1.3倍となり、過去最多だった。