夫の失踪と「不倫疑惑」から始まった物語

 簡単にあらすじとその反響を紹介する。『Tかわ』は瀬尾咲子(蒼井優)と充(松山ケンイチ)、園田樹生(中島歩)とあずさ(夏帆)の2組の夫婦を中心とする物語である。

 ドラマの始まりで、充とあずさが乗った長距離バスが事故に遭い、あずさは亡くなり、充は行方不明となってしまう。当事者の二人に事情を聞けない中、残された咲子と樹生は状況的には不倫だろうと思わざるを得ない。

 二人の中に残るそれぞれの夫・妻の性格と「不倫」はかけ離れているが、喪失の感情にケリをつけて遺された家族が前を向くためには、そのように整理するしか仕方ないのではないか……というのが前半までの状況である。

 咲子と樹生は徐々に打ち解けて気やすい仲になっていく。二人の距離がかなり近づき、樹生が「一緒に暮らしませんか」と提案するところまでいく。ただし、咲子と樹生は明確に交際しているわけではないし、樹生の提案も、恋人(あるいは夫婦)として暮らすのか、単なる同居人なのか真意が捉えづらい。

 そして、この大事な局面で、突然一年ぶりに充が帰ってくるのである。待ち焦がれた夫のはずなのだが、視聴者からするとここでは完全に「招かれざる客」である。好感度の高い俳優である松山ケンイチだからなんとか許容範囲であるものの、そうでなかったらもっとブーイングを浴びていたのではないか。

 さらに、困惑する咲子に向かって充は、自分とあずさの仲を疑うなら、樹生と咲子だって怪しいとも言えるじゃないか、というような発言をする。これは見事な逆ギレである。

 咲子の記憶に残る充は、穏やかで優しく、咲子を愛し、感情のブレが少ない人物であったのだが、帰ってきた充が明かした本人の人物像は、失踪癖のある変な人だった。

 充は不慮の事態に巻き込まれて行方不明になったのではなく、自主的に姿をくらましていたのだ。さらに重要なのは、別に咲子に対して不満があったわけではなく、単に本人の癖(へき)だったという点である。

夫が帰ってきたと思ったら、今度は妻が消えた

 そしてここからさらに物語は急旋回する。

 今度は咲子が充に黙って行方をくらましてしまうのである。ここでは視聴者からも、咲子が誰のもとを訪れているのかわからないかたちでストーリーが進行する。

 やや引っ張った末に明かされるのは、咲子が向かったのは離婚した元夫が現在の交際相手と暮らす家だったことだ。咲子には離婚経験があったのだ。