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管理職の面談記録も、顧客本人のサインも残っている。だが、介護施設を訪ねた証券マンが目にしたのは、自分の投資信託についてさえ、ほとんど覚えていない老夫婦の姿だった。なぜ、こんな顧客の口座で乗り換えが繰り返されていたのか。大手証券で25年間働いた元証券マンが、営業成績を優先する組織の矛盾と、顧客保護の難しさを告発する。※本稿は、元証券マンの日野山 大『証券マンひりひり日記』(三五館シンシャ)の一部を抜粋・編集したものです。
※本稿は著者の実体験に基づいていますが、登場人物のプライバシー保護のため、人名は仮名とし、人物像の改変や一部脚色を加えています。
成績不良店舗に進駐してきた
マッカーサー支店長の大改革
蒲田支店は社内でも有数の不振店舗で、起爆剤と期待された高田川支店長となっても数字は低迷し続け、全国の支店ランキングでも下位のままだった。そんな状況が続いた末、ついに支店長交代が決まった。支店長の任期は通常2年だが、蒲田支店では毎年のように支店長が替わった。私が蒲田支店に着任して1年半が経っていた。
後任として着任したのが山之下支店長だった。赴任初日の朝礼で彼はこう宣言した。
「おまえらは全項目で最下位という前代未聞の成績だった。今日からGHQ統治下にあると思え。心を入れ替えないやつは容赦なく飛ばす」
支店内の空気が凍りついた。
山之下支店長は改革屋だった。某大手外資系金融機関と業務提携することとなった会社が進める効率化を徹底的に実行するために送り込まれてきた人物である。
それまで営業マンたちは株式新聞や証券情報誌、時には怪しげな情報ダイヤルを頼りに銘柄を探していた。山之下支店長はそれを全否定した。
「株式新聞?そんなものは競馬新聞と同じだ。情報ダイヤル?論外だ。今日からシティのモーニングカンファレンスとアナリストレポート以外は見るな。シティにはアナリストがいる。その連中が調べた情報と、おまえらが喫茶店で仕入れてきた噂話と、どちらが信用できる?」







