誰も反論しなかった。

「おまえらのやってきた営業は営業とは呼べない。勘と根性とお願いで数字を作っていただけだ。自己流はすべて禁止だ」

 さらに業務改善コンサルタントが作成したマニュアルを持ち込み、「今までのやり方は全部間違っていた。言われたとおりにやれ」と言い放った。

 朝から支店中を巡回し、電話中の営業マンを容赦なく怒鳴った。

「こんな時間に長電話してなんになる!効率が悪いだろ。アポは前日までに取っておけ!」

 大音量の怒声が、電話の向こうの顧客に聞こえていようがお構いなしだった。

 ある日、私は思わず言ってしまった。

「お客さまに聞こえますので、電話が終わってから注意されたほうがいいのではありませんか」

 山之下支店長はゆっくり私を見た。その目には不快感が満ちていた。

「本社から効率化を求められている。電話中だろうが、関係ない。支店長には電話を切る権限がある」

「会社が右と言ったら右」と
叫ぶ上司に筆者は無言の抗議

 完全に火に油だった。その日の午後、山之下支店長から、支店長室に呼び出された。狭い部屋に入ると、山之下支店長は腕を組んでいた。

「おまえの成績は悪くない。だが、図に乗るなよ」

 そこから延々と説教が始まった。

「俺を舐めるな」「効率化の邪魔をするな」「高田川は結果を出せなかったから飛ばされたんだ」……。

 私は途中で思わず反論した。

「効率化そのものを否定しているわけではありません。しかし、お客さまとの信頼関係を壊してまで効率を追うべきではないと思います」

 言い返されると思っていなかったのだろう、山之下支店長の顔は紅潮し、口をもごもごさせている。メーターが振り切れんばかりに怒っているのがわかった。その表情を見て、私は逆に冷静になっていた。

「欧米ではコンサルティングフィーという考え方がありますが、日本はまだ売買手数料中心です。そこから脱却して……」

「俺に説教を垂れるな!中途半端な知識が一番邪魔なんだ!」

「邪魔しているのではなく……」