結局、インド側は2026年7月、優先区間の運行を国産車両で始め、日本の次世代車両E10系の導入は2030年代前半になるとの見通しを示した。
また、インドは2027年夏の開業を掲げるが、FTによると区間は約100キロにすぎず、当面は最高時速320キロの日本製新幹線ではなく、開発中のインド製車両を使うという。日本の外交官は第1期区間がわずか50キロになる可能性を指摘し、日程そのものも疑問視している。
さらに、同じムンバイ~アーメダバード間には、すでにインド製の準高速列車「ヴァンデ・バーラト」が走る。新たな専用線に導入する国産車両は別途開発するものだが、当初想定した新幹線方式から代わる以上、巨額の投資に見合う性能を実現できるかが問われる。
欧州方式と日本方式をどう共存させるかも課題だ。将来、日本のE10系を導入する際には、信号設備との適合性や安全性を保証できるのだろうか。
目先のコスト削減がインドの「将来の利益」を損なう理由
私は2025年7月にダイヤモンド・オンラインへ寄稿した一文(『そりゃインドに投資できんわ…「世界最大の国」に幻想抱く日本人が知らない“残念な事実”』)で、インドの行政制度の非効率性や契約履行の不確実性を指摘し、「インドは投資適格国ではない」と断じた。
今回の新幹線問題は、まさにそれを体現している。民主主義国家だからといって、ビジネスで信頼できるかどうかは別問題だ。
本計画は、巨大な高速鉄道網の第一歩にすぎず、FTによれば、インド鉄道省は全長約4000キロメートル、7路線の高速鉄道回廊を計画し、16兆ルピー(約27兆円)の投資を見込む。
高速鉄道は、車両・信号制御・軌道・電力・運行管理など多数の技術を組み合わせた繊細なシステムである。インドが将来、独自の産業を確立したいなら、海外の優れた技術を学び、自国の技術力を高めていく必要がある。だが、技術の習得や人材育成を進めるうえで、協力相手との関係が悪化すれば、技術移転や今後の協力に支障が生じ、結果としてインド自身が不利益を被る可能性がある。
目先の調達費用の削減や「標準化」を重視するあまり、システム間の技術的な適合性の確保や人材育成に追加のコストが生じれば、かえって長期的な事業費用が膨らむおそれもある。







