『マネーの拳』(c)三田紀房/コルク
三田紀房の起業マンガ『マネーの拳』を題材に、ダイヤモンド・オンライン編集委員の岩本有平が起業や経営を解説する連載「マネーの拳で学ぶ起業経営リアル塾」。第87回では、社外取締役の役割について解説する。
宿敵が社外取締役としてやってくる!?外資系ファンドの企み
新興アパレル企業・T-BOX が外資系ファンド・サンデーキャピタルによる買収を避けるべく、あえて開催した臨時株主総会も無事に終了して2カ月。T-BOXは一連の騒動で知名度を上げ、事業も好調だった。
新商品は入荷即完売。工場をフル稼働しても、購入の要望が絶えない状況だ。T-BOXの創業社長である花岡拳が店頭に立てば、客から応援の声がかかる。その様子を見た役員の大林隆二は「今回の騒動のおかげで益々知名度アップしましたね」と花岡に声をかけるが、花岡は「商売には追い風になった。が…しかし…」となにかを含んだ表情を見せる。
大林はまだ知らなかったが、T-BOXの買収工作に失敗したサンデーキャピタルが、今度は自分たちの息が掛かった人物を役員にするよう要請していたのだった。その人物とは、花岡の宿敵でもあり、サンデーキャピタルに出資し、同ファンドを影で操る一ツ橋商事の井川泰子だったのだ。
「ダメよそれは…サル(花岡)が断るに決まってるわ」
サンデーキャピタルの計画を知らされた井川自身もそう語り、またT-BOXの経営陣も取締役会では反対の声が多数を占める。とくに生産部門の役員である片岩八重子(ヤエコ)は「あんなやつ入ってきたら会社がメチャメチャになるわ!!」と猛反発。しかし肝心の花岡は、その要請を承認しようと経営陣に語るのだった。
社外取締役とは、経営者に「NO」と言う仕事
『マネーの拳』(c)三田紀房/コルク
サンデーキャピタルは今回、自分たちの意のままにT-BOXを動かそうと社外、それもライバル企業の中枢にいる井川を送り込んだ。だが、上場企業などでは、ガバナンスのために、自ら社外の人材を役員として迎え入れる仕組みがある。
それが「社外取締役」だ。経済ニュースを見ていればよく出てくる言葉だと思うが、そもそも社外取締役とはどんな役割を担っているのだろうか。
会社法上の定義で言えば、社外取締役とは、その会社で業務を執行する取締役や従業員ではなく、過去の在籍歴に加え、親会社や兄弟会社の経営陣、経営者の近親者などとも一定の関係を持たない取締役のことを指す。その会社の役員でありつつも、外部の目線を持ち、ガバナンスを効かせることが求められるわけだ。
特に上場会社においては、社外取締役の存在感はますます大きくなっている。東京証券取引所の「コーポレートガバナンス・コード」では、プライム市場の上場会社に、独立社外取締役(会社の経営から独立した立場の社外取締役)を少なくとも取締役会の3分の1以上、それ以外の市場でも少なくとも2人選任することを求めている。
そこでは、経営陣の監督に加えて、経営陣や支配株主との利益相反をチェックし、少数株主の立場にも目を配る役割が期待される。
また、現在のコーポレートガバナンス・コードでは、独立社外取締役の機能強化に加えて、取締役会にジェンダーなどの多様性を確保する考え方が重視されている。
こうした流れの中で、女性の社外取締役を登用する企業も増えつつある。デロイトトーマツの調査では、25年度において、社外取締役の30%以上が女性である上場企業は54%に上り、前年から9ポイント増えている。多様な人材を経営の意思決定に加えることは、パブリックカンパニーの重要なテーマになりつつある。
とはいえ、社外取締役は人数をそろえればいいというわけではない。経営陣に遠慮して賛成するだけでは、本来の役割は果たせない。社内にはない経験や知識を企業に持ち込み、ときにはガバナンスの観点から経営者に「NO」と言う存在が必要になる。
これまでさんざんやり合ってきた井川を、あえて経営陣に迎え入れようとする花岡。だが、現場にはとてつもない嵐が吹き荒れることになる。
『マネーの拳』(c)三田紀房/コルク
『マネーの拳』(c)三田紀房/コルク







