登山にたとえられる「アイデアの考え方」とは?

 まず(1)「違う『テーマ』を考える」
 この場合のテーマとは、登山でいうところの「山」ですね。みんなが富士山に登っているところを、自分だけ浅間山を登る。あるいは、まだ誰も登ったことのない山を登る。富士山より高い山でなくてもかまいません。とにかく「違う山」であること、つまり「違うテーマ」であることが重要なのです。

 たとえば、わたしの場合でいうとみんなが産業用ロボットの山を登っていたところを、医用ロボットの山を登りました。市場としては小さいかもしれないけれど、とにかく違う山を登りました。そこをアメリカで評価され、国際学会で評価され、日本でも評価していただけるようになったわけです。

 次に(2)「違う『方法』を考える」
 違う方法とはなにか。登山にたとえるなら、これは「歩く道」ですね。つまり、登る山はみんなと同じ富士山にする。でも、自分だけはみんなと違うルートから登る。大きな鉈を片手に、誰も登ったことのない道を切り拓いていく。月並みな例を挙げるなら、取引先にお礼を伝えるとき、みんなが電子メールを書いているところを、自分だけは直筆の手紙を書く。「お礼を伝える」という山は同じでも、そこに至るルートが違うわけです。

 あるいは、みんなが「プラスチック製のパソコン」をつくっている中、唯一「アルミニウム製のパソコン」をつくったアップル社なども、違うルートを開拓して成功した事例といえるでしょう。パソコンとしての基本性能(登る山)は他社製のものと変わりがないはずなのに、明らかに新しい。登るルートが変わるだけで、印象はここまで変わります。

 先に紹介したわたしのロボット内視鏡の場合だと、みんながモーターでロボットを稼働させようとしていたところを、わたしは形状記憶合金に熱を加えるという道を選びました。ロボットが動く、という結果は同じであっても、ルートが違えば大きな評価の対象となります。