そこで飲み物を注文し、ノートパソコンに向かって再就職先を探す。そんな姿がネット上で紹介され、スタバが「中年失業者の収容所」とまで呼ばれた。

 もちろん、この人たちは商品を購入しているのだから、何も注文せずに座席を占拠する人とは事情が異なる。

 ただ、こうした現象からも、中国のスタバが単なるコーヒー店を超え、高齢者や失業者など、さまざまな人々の生活を支える場所になっていることが分かる。

 上海のような大都市には、日本の一般的な店舗よりも広く、座席数の多いスタバもある。個室まで用意されている店舗もある。それでも、注文しない人が大勢集まれば、コーヒーを飲みながらくつろぎたい客が座れなくなることもある。

「無料の居場所」の裏側
スタバを襲う経営の現実

 スタバが新ルールに踏み切った背景には、経営環境の変化も考えられる。 

 近年、ラッキンコーヒー(瑞幸咖啡)やコッティコーヒー(庫迪咖啡)などの中国ブランドが、9.9元(約230円)のコーヒーを打ち出すなど、低価格戦略で顧客を獲得してきた。

 これに対し、スターバックスは広い店舗空間を確保し、店内でゆっくり過ごしてもらうことを重視してきた。しかし、大型店舗は家賃や光熱費、人件費などの負担が大きい。

 さらに、米スターバックスは2025年11月、中国の投資会社・博裕投資(Boyu Capital)との合弁事業を発表した。中国事業は博裕側が60%、スターバックス側が40%の株式を保有する体制となった。そのため、座席の利用率を改善し、商品を購入した顧客の権利を優先的に守ることが求められるようになったという見方もある。

 新ルールの導入をめぐり、中国のSNSでは反対派と賛成派の意見が真っ二つに分かれた。

 反対派からは、自由に立ち寄れる場所だったのに、スタバの「サードプレイス」という理念が損なわれると懸念する声が上がった。普通のコーヒーチェーンと変わらなくなるのではないか、という意見もあった。

 ところが、ネット上では、こうした反対派の意見より、賛成の声が圧倒的に多い。