スペインの首都マドリードから南部セビリアへ向かう途中、高速列車の衝突事故が発生。民間会社イリョ(イタリア資本、赤い車体)の車両に、後方からスペイン国鉄の高速鉄道AVEの車両(白い車体)が追突した。 Photo:Anadolu/gettyimages
【前後編の後編】10月28日、スペインで高速列車同士の追突事故が発生し、日本人2人を含む69人が死亡、200人超が負傷した。実はスペインの高速鉄道は、中国に次いで世界2位の路線網を誇る。規模拡大の一方で、指摘されてきた課題に迫る。(ライター 前林広樹)
スペイン高速鉄道69人死亡事故で
浮かび上がる数々の懸念点
まず、スペイン高速鉄道は「運行方式の複雑さ」が指摘されている。線路や信号、駅舎などの設備は国営企業アディフが所有する。そこに線路使用料を払う形で、スペイン国鉄AVE、イタリア鉄道グループが出資する民間イリョ、フランス国鉄SNCF傘下のオイゴなどの車両が走る、「上下分離方式」を採用している。
この方式は、各社に競争を促すことで、運賃やサービス改善などのメリットを利用者にもたらす。一方、運行を複雑化しシステムの維持管理を難しくするデメリットも付きまとう。
一例として車両形式は実に複雑で、スペイン国鉄は独自開発のAVE、イリョは本国イタリア同様のフレッチャロッサ1000、オイゴはフランスの2階建て車両をスペイン仕様にしたものを使っている。
複数の運行事業者が参入し車両形式も異なる環境では、インフラ管理者と各事業者の間で、運行情報や異常時の対応手順を適切に共有することが非常に重要だ。
今回の69人の死亡が確認された衝突事故でも、管制センターと列車の間で停止状況が正確に把握されていたか、異常時の運行再開手順に問題がなかったかが検証の焦点となっている。
建設コストは世界平均の4割以下
それでも採算性に課題のワケ
他方で、筆者が問題だと感じるのが、スペイン高速鉄道の「収益構造」だ。記事前編でも指摘したように、開業30年超となった高速鉄道には、規模に対して「安全投資が不十分」という指摘が相次いでいる。初期設備は老朽化しており、設備更新費が少ないことは、運行の安全性に対して大きな懸念をもたらす。







