同じ文章でも
発信者の影響が及ぶ

 この文章、もっともらしく聞こえるが、実は意味はない。でたらめな文章を自動でつくるプログラムが生成した文を、日本語にしたものだ。

 アムステルダム大学などの研究チームは、こうした文章に発信者の写真とプロフィールを添えて参加者に読ませた。発信者は科学者か、精神世界の指導者のどちらか。同じ文章でも、科学者の言葉として読む人と指導者の言葉として読む人が出るように組み合わせ、どのくらい信用できるかを7段階で答えてもらった。

 2022年に発表された論文によると、対象は日本を含む24カ国の1万195人。すべての国で、科学者の言葉とされた文章のほうが信用された。日本は両者の差が小さい部類だったが、傾向は同じだった。研究チームはこれを「アインシュタイン効果」と名づけている。

 文章の中身は一字も変わっていない。変えたのは、誰が言ったことにするかだけだ。それだけで評価が動いた。

 私が引っかかったのは、評価の場面にまで発信者の影響が及んでいたことだ。誰の話を聞くか選ぶときに肩書きを頼るのは、ある程度しかたがない。だがこの実験の参加者は、文章を読んだうえで中身を評価している。それでも、誰の言葉かに引っ張られた。

 似た問題は会議室でも起こりうる。ある案がなぜ採用されたのかと聞かれて、客の要望や使い勝手を説明できるならいい。返ってくる答えが「社長が推していたから」だけなら、案の中身は誰も検討していないことになる。

 承認した人の名前からは、客に選ばれる理由も、現場で回せる理由も読み取れない。誰が責任を持って決めたかという話と、その案がなぜよいのかという話は別物だ。2つを混ぜると、会議で確かめるべきことが抜け落ちる。

2人が嫌う3文字は
「肩書き」

 もうおわかりだろう。2人が嫌う3文字は「肩書き」だ。

 豊田氏は2020年、中日新聞のインタビューで役員体制の見直しについて語った。その詳しいやり取りを載せたトヨタイムズの記事に、こんな一言がある。

「『肩書き』で上の人の意見が通ったりするじゃないですか」