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“破壊者ベゾス”によるワシントンポスト買収、
真の狙いはどこにあるのか

瀧口範子 [ジャーナリスト]
【第258回】 2013年8月22日
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 すでに新聞ジャーナリズムは、この方向に向かっている。ブログやツイッターの影響で、読者はいつも新しいニュースやアップデートを欲しがっている。その一方で、長い記事はインタラクティブなデータを盛り込んだりして、電子小冊子としても売れるように内容を充実させるという方法が出てきている。

 ワシントンポストも、今までは月間20本までの記事は無料、それ以上は有料購読者になるという区分だったが、そんな中途半端なやり方はばっさり切ってしまうかもしれない。

 たとえば、ツイッター速報は無料だが、各記事を読もうとすると有料になるといったような、これまでとは違ったパッケージ化も打ち出してくるかもしれない。なんといっても、ベゾスはアマゾンでワンクリックという強力な販売ツールを持っている。これをマイクロペイメントに活かさないわけはない。

 ワシントンの競合メディアも気になるところだ。ワシントンの政治問題を中心に取り上げるインターネットメディアでは、『ポリティコ』や『デイリー・コス』という人気のサイトがある。

 ワシントンポスト買収にあたって、ベゾスは『スレート』という、こちらもある程度人気のあるテクノロジーサイトなど買収しなかったアセットもあるのだが、ひょっとすると、その代わりに政治報道での競合メディアを買収して、ワシントン色を先鋭化させるという手に出る可能性もあるだろう。

広告モデルの再構築や
地方紙との連合もある?

 さらに、アマゾンとしてこれまでやったことのないビジネスも、取り組みやすくなる。

 たとえば、通常の広告や新聞の三行広告だ。コンテンツが豊富であっても、出版社が発行する電子書籍には広告を表示させることはできなかったが、自社の新聞コンテンツとなると話は別だろう。

 そして、三行広告を再び新聞社の元に取り戻そうとするかもしれない。アメリカの新聞社は、クレッグズ・リストというネット三行広告サイトに広告収入を軒並み奪われた。そもそも新聞業界が苦境に陥った元凶がクレッグズ・リストだった。

 ベゾスなら、雇用情報や不動産情報、「売ります・買います」、「恋人求む」といったこの手の三行広告を、巧みな方法で引き寄せるかもしれない。

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瀧口範子
[ジャーナリスト]

シリコンバレー在住。著書に『行動主義: レム・コールハース ドキュメント』『にほんの建築家: 伊東豊雄観察記』(共にTOTO出版)。7月に『なぜシリコンバレーではゴミを分別しないのか?世界一IQが高い町の「壁なし」思考習慣』(プレジデント)を刊行。

ビジネスモデルの破壊者たち

シュンペーターの創造的破壊を地で行く世界の革新企業の最新動向と未来戦略を、シリコンバレー在住のジャーナリストがつぶさに分析します。

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