海外出張から戻ってきた部下の氷河秀子さんは、なんだかご機嫌ななめだ。「もしかして、嫌われるようなことを言ったかな」と心配になった中田堅二課長は、彼女をランチに連れ出すことにした。

「あ、あのさあ、なんだかこの頃、態度がつっけんどんじゃない?よかったら理由を教えてくれないかな」。こわごわと切り出した中田氏に、氷河さんは一言、「ゴミのせいです」。

 好物のパスタで機嫌を直してくれた彼女。真相はこうだった。夫婦共稼ぎの氷河家では、彼女が寝る前にゴミの分別をし、翌朝、夫がそれを捨てに行くことになっている。とはいえ、氷河さんはフルタイムで仕事をしており、残業もかなり多い。眠い目をこすりつつゴミと格闘する自分と、出勤時にマンションの集積所に持っていくだけの夫――。日頃から「どうも不公平なような…」と思っていた。

 そして今回の長期出張である。疲れ果てて帰ってきた氷河さんの目に映ったのは、なんとゴミ屋敷と化した我が家だった。

「もう、臭いったらありゃしませんよ!だいたい、私がいないなら、自分で分別すればいいじゃないですか。それなのに『言ってくれればやったのに』だの、『分別の方法がわからなかった』だのって言い訳するんです。そんなの役所のパンフレットを見れば一目瞭然なのに!ああ、腹が立つ。どうして、男って家に帰ると“指示待ち人間”になっちゃうんですか!?」

 中田氏は何も言えなかった。指示を待つどころか、彼はゴミ出しや分別など、一度もやったことがなかったからだ。

たかがゴミ問題で
妻が怒り狂うワケ

 たかが「ゴミ」と侮ってはいけない。第一生命経済研究所の調査によると、「家事の役割分担」は夫婦喧嘩の原因の第3位で24%。喧嘩のとき、先に怒り出すのは妻の場合が多く、43%だ(「夫が先」は37%)。低い年代ほど「妻が先」は多くなり、最も多いのは30代で過半数(55%)に達している。「パートナーに不満がある」人も、女性が66.7%と大半。このうち共働きの人が61.8%で、専業主婦より多かった。

 たしかに総務省の調べでは、3歳未満の子どもがいる共働き世帯の1日あたりの家事時間は、夫が30分なのに対し、妻は3時間4分。子どもがいない共稼ぎ夫婦の場合も、夫が25分、妻が3時間3分と圧倒的に長い。