最近誕生した専門職大学院の中には、よく調べてみるとビジネスマンのキャリアアップに有利な学校が少なくない。というか、まだ大学院自体の機能が知られていない学校が多いようである。今回紹介するのは「ハリウッド大学院大学」も、そういう意味で注目できる、役立つ大学院である。

 設立母体のもともとは、ハリウッド美容専門学校。業界外の、しかも男性には特になじみがないかも知れないが、多くの美容師を輩出してきた美容界の名門である。ハリウッド大学院大学は、「世界初のビューティビジネス専門の大学院」なのである。

 ハリウッド大学院大学にとっては、過去の実績が逆に学校の理解を妨げている部分も否めない。すなわち、「美容専門学校の上位機関」という短絡的な捕らえられ方が一辺倒に通用している感がある。

 しかしカリキュラム的には、ハリウッド大学院大学は『経営の大学院』である。より正確に言えば、「ビューティビジネスの経営管理の大学院」。つまり、ジャンルを絞り込んだビジネススクール、MBA要請スタイルの大学院である。

 反面、美容業界を核とするネイル、エステティック、コスメティックサロンなどにとっては待望のグラデュエイト・レベルの大学院といえるだろう。美容師養成課程はほとんどが専門学校であり、高等教育を経験した美容師は、大学・短大を出てから美容学校に進んだ例などを除いて非常に少ない。ハリウッド美容専門学校では大学院進学の基準を満たす「高度専門士」のタイトルを取れる課程を儲けている。すなわち大学を経由せずに、「修士で美容師」を生み出す体制をつくっているわけで、これはこれで業界にはメリットがあるだろう。

 一方で、この大学院は美容師の腕を磨くような学校ではない。実技ではなく経営、経営管理の大学院である。高度専門士ルートで入学してくる学生は、すでに経営が視野に入っている層なのである。

 回りくどくなったが、このルートが成立したことで、業界外の社会人にも、「修士を取って転身」のルートが開けたことに注意してもらいたい。この大学院がカバーする業界は、単立のサロンというよりは、もっと大きい。ビッグビジネスとなっているエステやネイルなどのチェーン、一部上場企業もある化粧品会社、などである。もとより大学院卒が少ない業界に、風上からはいっていくためのルート、と考えてもいいだろう。また高等教育レベルで「教えられる人」が少ない業界なので、大学教員を狙っている人もチェックすべき価値がある。

 授業は平日の夜と、土・日の開講。普通に考えれば、現役の美容師よりは一般企業に勤めているほうが通いやすい。その意味でも、ここはビジネススクールである。

 そして立地。ハリウッド大学院大学は、六本木ヒルズの中、ハリウッドプラザの中にある。もともと専門学校だけの時代から、ここが本拠地なのである。

 総括すれば、ビジネスパーソンのための、ビューティビジネスの大学院。名前のイメージから来る先入観に、惑わされないほうがいい。

ハリウッド大学院大学