2013年7月30日、筆者はBSフジ「プライムニュース」に生出演し、生活保護問題について、片山さつき参議院議員をはじめとする3名のゲストと討論した。筆者にとっては、生まれて初めてのTV出演であった。
今回は、このTV出演時の出来事について述べる。「TVに出演する」ことの裏側や、政治家を目の前にするということについて、想像を及ぼしてみる1つの手がかりとしていただければ幸いである。
オンエア6日前にやってきた
TV生出演依頼
2013年7月5日、筆者の書籍「生活保護リアル」(日本評論社)が発売された。この書籍は、本連載「生活保護のリアル」シリーズの他、「シノドス」に寄稿した生活保護関連の記事数本、図書館業界人向け雑誌「ライブラリ・リソース・ガイド」Vol.2に寄稿した「知の機会不平等を解消するために-何からはじめればよいのか」をベースとし、大幅な加筆と再編集・章によっては書きおろしを行ったものである。本書は幸いにも好評を博し、発売後2週間で重版が決定した。発売がアナウンスされた直後から「アマゾン」などのネット書店に注文が入り、発売後はアマゾンで一時売り切れになったほどである。いかに多くの方に期待を持たれていたのかと、著者として嬉しくも、身の引き締まる思いである。
7月25日、筆者は、日本評論社の担当編集者を通して、BSフジのプロデューサーからの連絡を受けた。「『プライムニュース』で、片山さつき議員か世耕弘成議員と生討論をしてほしい」というものである。すぐに「応じたい」と考えた。本連載では、筆者は一貫して生活保護制度の重要性と、より拡充される必要性を、根拠のもとに主張しつづけている。しかし、そのためにも、反対する人々の意見に対して耳を塞ぎたくない。だから、自民党や日本維新の会で、特に先鋭に生活保護制度を縮小・削減する必要を訴えている人々に、取材を申し込んできた。しかし、一度も応じていただけたことがなかった。願ったりかなったりの機会ではないか。
それに、筆者は長年、文字によるテキストをベースとした記事を中心に著述活動を行ってきて、限界を感じている。文字ばかりの硬派な記事を読まない人々、文字ばかりの本を手に取る習慣を持っていない人々には、筆者が提供したいと考えている情報やメッセージは伝わらないからだ。なんとか、「ふだん主に接するメディアはTV、新聞は拾い読みする程度」と考えている人々にアクセスできる手段を持ちたい。そう考えていた。
ただ、問題は、筆者がTVというメディアをよく知らないということだ。筆者自身は徹底したTV嫌いで、「TV持っていない歴」が既に30年目に及んでいる。「TVに出演する」ということが引き起こすさまざまな影響を、正直なところ、想像しきれない。しかし、この機会を逃すと、自民党で生活保護制度の縮小をリードする議員たちと対面して話す機会は、二度と得られないかもしれない。
筆者は、近所に住む102歳のコーヒー豆販売店主・アンドウさんが自家焙煎した豆でコーヒーを淹れ、そのコーヒーを飲みながら、「アンドウさんに相談したら、何と答えるだろう?」と考えた。たぶん、「まだ若いんだから、勉強と思って、機会を活かしなさい」という答えが返ってくるだろう。なにしろ102歳のアンドウさんから見ると、80代も70代も50代も30代も、みんな「若者」なのだから。私は、コーヒーを飲み終えるとすぐ、「ぜひ、出演させてください」と返事した。