「ベンチャーは、一人では絶対に成功しない」
「ノーゼロデー」でユーグレナを支えてくれた仲間

出雲 でも、ひとりでやってたら僕は辞めていたと思うんですよ。いくら信念があっても、挫折していたかもしれない。須田さんに田中さんがいたように、僕にも鈴木と福本という仲間がいて、彼らがいたから今がある

 大企業として最初に支援してくださった『伊藤忠商事株式会社』と出会うまでの3年間、本当に僕の月収は10万円でした。そんな会社で、月収12万円程度でついてきてくれたのが福本と鈴木でした。

須田将啓(すだ・しょうけい)[株式会社エニグモ 代表取締役最高経営責任者]慶應義塾大学院 理工学研究科 計算機科学専攻 修士課程修了。
2000年博報堂入社。2004年株式会社エニグモ設立。現在、代表取締役最高経営責任者。2012年世界経済フォーラム(ダボス会議)Young Global Leader 2012 選出。
著書に、『やんちゃであれ!』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『謎の会社、世界を変える。――エニグモの挑戦』(ミシマ社)がある。

須田 それは僕も同じですね。いい仲間がいると、悲壮感に苛まれることがなくなる。田中とは、大体どんな辛い時でも、笑いながらやってました。逆に言えば、そんな仲間との出会いこそが重要でもあります。

出雲 営業をやっている福本に、全然売れてなかった頃のことを聞いてみると「僕売りに行ってたんですけど、『ノーゼロデー』ってのをつくってがんばってました」と言うんです。

 それ何なの?と聞くと、まず「今日は売上ゼロだと家に帰らない日」という日を突然決めるそうです。それで、もしその日が売上げゼロだったら、とにかく道を歩いてる人に、

「これ買ってもらえないと、今日僕家に帰れないんで……」

 と言ってミドリムシを売っていたらしいんです。

須田 すごいですね(笑)。やっぱり、ひとりじゃない方が成功確率が全然高い気がしますね。

出雲 ひとりで何もできない人が、仲間とのチームプレイで成し遂げられるというのがベンチャーの一番いいところであり、楽しみですよね。ちょうどマンガ『ONE PIECE』みたいに、小さなヨットからスタートして、少しずつ船が大きくなっていく。そして航海士のナミがいて、コックのサンジもいてはじめて、ルフィは船長になれるという。

 僕は芸術家などの、「ひとりでできる人」を尊敬していますが、自分はそんな性分だとは思いません。ベンチャーに関しては、ひとりでやってるのを見ると「大丈夫?友だちいないの?」と心配になってしまう。自分はひとりではまったく何もできなかったという自信がありますから。