「グローバル戦略で大事なのは『どこでやるか』ではない」
起業家は、世界規模でインパクトを与えてこそ

出雲 エニグモはこれからどんどん世界に漕ぎ出すと思うんです。

須田 そうですね、今進めているのはバイマの他言語展開。現在のところ日・韓・米を進めています。多言語化することで、海外にいる日本人がバイヤーとして日本にものを売ることができるという従来の取引に加え、たとえば世界中にいる韓国人が、韓国に向けて売ること、アメリカにいるバイヤーが、世界に向けて売ることなどが可能になる。すると、たとえばアメリカで日本のデニムの人気が出てきたとしたら、我々が行って交渉し、よい価格で卸すことも可能になる。国同士の連携によって、これまでのバイマの仕組みに新しい側面が見出されると考えています。

 これに加えて、いきなり海外でサービスをローンチしたりすることも積極的に行っていこうと思っています。

出雲 それって本当にすごいことですよね。

須田僕の考える「世界」には2つ意味があります。「グローバル」という意味と「時代を変える」ということ。「時代を変える」というのは、新しい価値を生み出すことで人々の生活やライフスタイルを変えてしまうことです。

 そこに「グローバル」という要素が加わったものこそが、本当の意味での世界展開だと思っています。つまり、「世界規模で時代を変えてしまう」ということです。やっぱり起業家は、どれだけインパクト与えているかによって価値が決まる存在だと思っています。面白いけどちょっとした話題で終わってしまうのはただの「企画屋」であって、僕の目指すところではない。

出雲 僕も同意見ですね。「世界を変える」というのは、「『バイマ』がない世界」から、「『バイマ』があって楽しい世界」に変えるわけですよね?ユーグレナにとっての「ミドリムシ」も同じです。今眼前にある「ミドリムシがなくて栄養失調がある世界」を「ミドリムシで栄養失調がない世界」にすることこそ、真のユーグレナの世界展開です

 我々が「世界を変える」と常々申し上げているのは、我々が提供するサービス・プロダクトで「世界を今と違う、幸せな社会構造・価値観に変えます」ということであり、このメッセージこそが我々のグローバル戦略の真意です。ビジネスをやっている場所自体は、私にとっては本当にどうでもいいことです。それは「世界」という言葉とは何の関係もないとすら思っています。そうしたことを胸に秘めて、我々もどんどん世界に出て行こうと思っています。

須田 世界規模で世界を変えるというのは、起業家のインパクトとしてはまさに最高峰。僕も一起業家として、そこを目指したいと思います。

最後にお互いの著書を交換。お二人とも、お忙しい中、ありがとうございました!

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僕はミドリムシで世界を救うことに決めました。

東大発バイオベンチャー「ユーグレナ」のとてつもない挑戦

いま日本に、世界から注目を集めるバイオベンチャーがある。名は、株式会社ユーグレナ。「ミドリムシ」の大量培養技術を核に、世界の食料問題、エネルギー問題、環境問題を一気に解決しようと目論む、東大発ベンチャーだ。そのユーグレナを創業した出雲充氏が、起業に至る7年と、起業してからの7年を初 めて語る。

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須田将啓(すだ・しょうけい)[株式会社エニグモ 代表取締役最高経営責任者]
慶應義塾大学院 理工学研究科 計算機科学専攻 修士課程修了。
2000年博報堂入社。2004年株式会社エニグモ設立。現在、代表取締役最高経営責任者。2012年世界経済フォーラム(ダボス会議)Young Global Leader 2012 選出。
著書に、『やんちゃであれ!』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『謎の会社、世界を変える。――エニグモの挑戦』(ミシマ社)がある。
出雲充(いずも・みつる)[株式会社ユーグレナ 代表取締役社長]
1980年、広島県呉市生まれ。東京大学農学部卒業。
東京大学在学中の1998年、バングラデシュを訪れ、世界に存在する本当の貧困に衝撃を受ける。2年後の2000年、「ユーグレナ(和名:ミドリムシ)」のことを知り、世界の「食料問題」と「環境問題」を同時に解決できるそのポテンシャルに魅せられるも、培養技術が確立していないという壁の前に、一旦は事業化を断念。2002年、東京三菱銀行(現・三菱東京UFJ銀行)に入行。
2005年8月、株式会社ユーグレナを設立し、社長就任。東大発のバイオベンチャーとして注目を集める。同年12月には、世界で初めてユーグレナ(ミドリムシ)の屋外大量培養に成功。食品、機能性食品、化粧品、飼料、そして燃料と、数多くの分野で事業化を目指している。
2012年、2012年世界経済フォーラム(ダボス会議)Young Global Leader 2012 選出。