59種類もの栄養素を含むミドリムシが、食料問題や環境問題を解決するポテンシャルを秘めている――。ミドリムシが地球を救うという壮大な志を抱き起業した株式会社ユーグレナの代表取締役社長・出雲充氏。そして、グローバル・エクセレント・カンパニーでトップマネジメントを務めてきた経験を活かし、若き経営者のアドバイザーを務める新将命氏。ふたりが、日本における起業の難しさややりがい、そして今後の可能性について語り合います。
植物であり、動物でもある。ミドリムシとの出会い
株式会社ユーグレナ 代表取締役社長。
1998年東京大学文科三類入学、在学中に米国スタンフォード大学で開催された「アジア太平洋学生起業家会議」の日本代表を務め、3年進学時に農学部に転部。2002年東京三菱銀行に入行。退職後2005年8月株式会社ユーグレナを創業し代表取締役に就任。同年12月には世界で初となるユーグレナ(和名:ミドリムシ)の食用屋外大量培養に成功する。
著書に『東大に入るということ、東大を出るということ』(プレジデント社)、『僕はミドリムシで世界を救うことに決めました。』(ダイヤモンド社)等。
出雲充(以下、出雲) 今日はミドリムシのメンターとして新さんにご指導いただければと思います。よろしくお願いします。
新将命(以下、新) ミドリムシに着目されるなんて、実におもしろいですね。ミドリムシは植物と動物のどちらのカテゴリーに入るのでしょうか。
出雲 いやそれがとても難しんです。ミドリムシはわかめや昆布、ひじきの親戚ですから、海藻の一種なんですけれども、動くことができます。ハイブリッドカーと同じで、分類はとても難しいのですが、動く海藻の一種と考えていただくとよいと思います。
私は20歳のときにミドリムシと出会ったのですが、そのポテンシャルの高さに驚きました。植物と動物、両方の栄養素を59種類も含んでいるんです。
新 それは知らなかった、すごいですね。
出雲 栄養失調を解決するにはミドリムシが非常に重要な食料資源になるなと考えたんです。実は、ミドリムシの研究は私が注目する10年以上も前から行われていました。ただミドリムシの培養はとても難しく、芳しい結果が出ていなかったんです。大学時代の後半で、現在当社の取締役で研究開発部長を務める鈴木と研究を始めて、私としては1日も早くミドリムシを培養していろいろな人に食べていただけるような形にして届けたかったのですが、結局卒業には間に合いませんでした。
そこで当時の東京三菱銀行に就職しました。社会人としての動作所作を勉強しておけば、将来のミドリムシビジネスを立ち上げるときに役に立つと思ったんです。