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シリコンバレーで考える 安藤茂彌

シリコンバレーで「日本のこれから」を話し合う

安藤茂彌 [トランス・パシフィック・ベンチャーズ社CEO、鹿児島大学特任教授]
【第71回】 2013年9月2日
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 筆者は会場で別の質問をした。「日本の大企業(特に、エレクトロニクス産業)が、短期間に急速に競争力を失った真の原因は何か」。教授はしばらく考えてから、それは「環境への適応能力ではないか」と回答した。パネリストもこれに同調した。東アジアの中で日本企業だけが国際競争力があった時代が長く続いた。だが今は違う。韓国企業も台湾企業も競争力をつけたし、中国は今以上に手強い競争相手となる。刻々と変化する外部環境に対応していかないと、あっという間に敗者になるのが、グローバル時代の怖いところだ。

 韓台中の企業にはアメリカ流の競争原理を取り入れて急成長をしている企業がいくつもある。日本企業は外部環境の変化に目をつぶり、いつまで経っても伝統的な制度を捨てようとしない。終身雇用・年功序列はかつて日本人の幸福を守るシステムだったが、いまでは「幸福を保証できない単に居心地の良いシステム」になっているように見える。どこかの時点で競争原理を導入しないと、居心地の良さが一転して苦痛に変わるリスクがある。

 アメリカは厳しい競争社会であるが故に、実力のある人間は若くして大きな報酬を手に入れるが、実力のない人は万年平社員で過ごさなければならない。ポジションは年齢に比例しない。アメリカはグローバル時代に突入しても十分に対応できたが、日本は置いてきぼりを食らってしまった。その上日本企業は、競争力が低下しても一旦採用した社員の給料は払い続けなければならず、ドンドン体力を落としている。

 アベノミクス第3弾では解雇条件の弾力化が論議されている。グローバル時代に日本企業は、他国の企業と競争をしていかなければならない。他国の制度と著しく異なる制度があると、その分ハンディキャップを負う。解雇条件の弾力化は日本企業の競争力回復には必要不可欠である。ただ、転職をしても年金が引き継がれるような環境の整備も同時に必要だ。

 解雇条件の弾力化は社員の立場から見ても一概に不利な変更とは思えない。若い時期にレイオフされたら人生のやり直しができる。新しい人生設計で新しい職場を選べば良い。家族を抱えている中高年にとっては決断が難しいだろうが、若年労働人口はこれから益々減少していく中で、中高年の就業機会が減り続けるとは思えない。要はその人の「市場価値」だ。

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安藤茂彌
[トランス・パシフィック・ベンチャーズ社CEO、鹿児島大学特任教授]

1945年東京生まれ。東京大学法学部卒業後、三菱銀行入行。マサチューセッツ工科大学経営学大学院修士号取得。96年、横浜支店長を最後に同行を退職し渡米。シリコンバレーにてトランス・パシフィック・ベンチャーズ社を設立。米国ベンチャービジネスの最新情報を日本企業に提供するサービス「VentureAccess」を行っている。VentureAccessホームページ

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シリコンバレーで日本企業向けに米国ハイテクベンチャー情報を提供するビジネスを行なう日々の中で、「日本の変革」「アメリカ文化」など幅広いテーマについて考察する。

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