中国現地の銀行の融資活用には、いまだに躊躇する日本企業が多いかもしれません。しかしチャイナリスクをヘッジするうえで、現地の土地や設備といった資産(使用権や所有権)を活用して、現地の資本でビジネスを完結させるモデルは理想的であり、ぜひとも検討したい施策のひとつです。
前回、チャイナリスクをヘッジするために、中国子会社の利益配当の実施と、親子ローンの解消を急ぐようお伝えしました。しかしこれらを実施した場合、中国の子会社が運転資金に困るという事態に直面する可能性があります。
この場合、中国の子会社が製造業ならば、原則として50年の使用期限を持つ土地使用権、工場建物所有権、そして工場設備所有権を有していますから、これを担保として中国の銀行からお金を借りることが積極的に検討されなければなりません。
現地銀行の融資も条件次第で金利が低減される
この点について、日本のメガバンクの中国現地法人は、現地資産の担保価値を適正に査定して、これを担保にお金を貸してはくれません。査定の経験がないうえ、デフォルト(債務不履行)が起きたときに現地資産をどうやって換金したらよいかがわからないというのが、その主たる理由のようです。しかし、中国の銀行であれば、現地資産を担保にお金を貸してくれますから、日本企業はもっと中国の銀行との付き合いを深めるべきでしょう。
もっとも、「外貨でお金を借りる場合はともかく、人民元でお金を借りると、金利が高くなるのでは?」という不安の声が聞こえてきそうです。
確かに中国の銀行の貸出金利は、日本と異なり、自由化されていません。当局が基準金利を決めて管理しており、例えば、返済期間が1年を超える場合、貸出金利が6%超になるなど、とても高くなります。「親子ローンであれば銀行からの調達金利に0.5%程度上乗せした1〜2%程度の金利(注:親会社が調達する金利よりも一定程度高い金利で貸さないと、国税局が合理的と考える金利差相当額を益金算入されるリスクがあります)で済むのに、これは高過ぎる!」と感じる方が多いかもしれません。
しかし、以前から基準金利の70%までなら、個々の銀行の判断によりディスカウントする裁量が与えられていましたし、硬直的な金利規制が「影の銀行(シャドーバンキング)」を拡大させているとの国際的な懸念が強まる中、中国人民銀行は2013年7月20日以降、この基準金利の下限規則の撤廃を決定しました。
良好な担保提供と健全な利益計画、キャッシュフロー計画の提出により、銀行の裁量限度一杯のディスカウントを勝ち取れる場合、親子ローンとの金利差を2〜3%強以内に設定することが可能でしょう。この金利差は、チャイナリスクをヘッジするためのプレミアム(保険料)だと考えることができます。この金利差は、チャイナリスクをヘッジするためのプレミアム(保険料)だと考えることができます。現在のチャイナリスクが去るか、そのリスクが軽減されたときに再び親子ローンを復活すればいいのです。または、この程度の金利差負担を跳ね返すだけの儲けを中国で勝ち取ることを考えればいいのです。