また、メガバンクの中国現地法人からお金を借りる場合、親会社の連帯保証を要求される場合があります。これもメガバンクの中国現地法人が現地資産の査定ができないことに起因しています。この場合、中国の子会社がデフォルトを起こすと、親会社は連帯保証債務を履行する必要が生じ、その履行後、中国の子会社に求償権を持つことになります(注:この求償権は投注差の範囲でしか実行できません)。しかし、これでは潜在的に親子ローンを残存させることと同じですから、こうしたアプローチの選択には今後慎重になる必要があるでしょう。

 ここで提唱するリスクヘッジ策は、中国の子会社から取れる利益配当は取り、親子ローンで資金供与をせず、あくまで中国の子会社が現地資産を担保に資金調達するというものです。中国の子会社が直面し得るチャイナリスクに親会社が巻き込まれてしまう可能性は、現在のようなリスクが去るか、その程度が軽減されるまでの間、できる限り排除するのが合理的選択肢であると考えます。

「借りたものは返す」日本企業への信頼は厚い

 なお、子会社が現地資産を担保に資金調達する場合、「影の銀行」問題に起因して一層の金融引き締めが起きた場合に、融資が引き上げられるのではないかという懸念をお持ちかもしれません。

 しかし、非常事態でも夜逃げをせず借りたものは必ず返す、という日本企業(中国系と合弁の日系企業を含む)の誠実な態度は、中国の金融界において極めて高く評価されており、日本企業であれば、韓国企業や台湾企業と異なる高い与信を付与すると明言する金融機関もあるほどです。したがって、貸出先選定に慎重にならざるを得ない局面でも、日本企業が融資を拒絶されたり、まして不合理な引き上げの要求を受けたりする可能性は低いと考えます。

 このほか、中国ビジネスを継続するうえでのリスクをヘッジするには、事前に企業調査を徹底する、保険を戦略的に活用する、第三国間FTAを活用する、などポイントがいくつかありますが、詳細は新刊『これからの中国ビジネスがよくわかる本』に譲って、次回はマネジメントの現地化や、とりわけ台湾企業・台湾人の活用について紹介します。


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