ついに、ホンダが反撃ののろしを上げた。「今だから率直に認められるのだが、『インサイト』はトヨタ自動車の『プリウス』に完敗した。今度ばかりは、絶対に負けるわけにはいかない」(ホンダ幹部)。
9月6日、ホンダは6年ぶりに全面改良した主力小型車「フィット」シリーズを発売した。中でも目玉は、ハイブリッド車(HEV)で、既存のハイブリッドシステムに比べ35%以上の燃費性能の向上を達成した。
Photo by Fusako Asashima
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ホンダにとって、今回のフィット投入は“雪辱戦”の意味を持つ。ホンダには苦い記憶がある。2009年に、HEV専用車のインサイトを発売した矢先、HEVで先行していたトヨタが異例の価格戦略に打って出た。旧型の2代目プリウスを40万円以上も値下げして販売を継続し、新型の3代目プリウスの販売予定価格も大幅に引き下げたのだ。トヨタは自社のハイブリッドシステムの優位性も喧伝し、容赦なくインサイトをつぶしにかかった。結果的に、HEV戦争の緒戦でホンダは負けた。
それから4年。HEV戦争“第2ラウンド”のゴングが鳴った。新型フィットは対トヨタ軸を鮮明に打ち出している。ガソリン1リットル当たりの燃費が世界最高の36.4キロメートル、価格が163.5万円~と、燃費・価格共にトヨタの小型HEV「アクア」を凌駕している(アクアの1リットル当たりの燃費は35.4キロメートル、価格は169万円~)。
ホンダの追撃に、トヨタも手をこまねいているわけではない。大衆車の象徴である「カローラ」などにHEVの展開車種を広げる一方で、アクアの部分改良により、今期中に低燃費世界ナンバーワンの座を奪還する計画だ。
1リットル当たりの燃費40キロメートルに迫る低燃費競争が繰り広げられる傍らで、今期は、6月に富士重工業がHEV市場へ参入し、年内までにマツダも顔をそろえる。国内市場に占めるHEV比率は、現在の約2割からさらに高まる見込みだ。