ミュージックマンネットのウェブサイト。音楽業界を鋭く冷静に批評する榎本幹郎さんの連載は、一番のキラーコンテンツだ  Photo by J.M. 拡大画像表示

 そして、改良を重ねて育て上げたのが、冒頭でも説明したミュージックマンネットだ。本で生かされた屋代さんの「しがらみのなさ」が存分に生かされている。

 サイト上で目を引く記事は、初期の2000年1月から続くリレーインタビューだ。「『笑っていいとも』のテレフォンショッキングや『いつみても波瀾万丈』の音楽業界版をやりたかった」と屋代さんが話すように、紹介方式で音楽業界の要人へのインタビューを続け、今やインタビューした人数は114人。レコード会社の社長クラスだけでなく、秋元康、松任谷正隆、つんく、小室哲哉など有名歌手やプロデューサーが次々と登場している。

 もう一つ、屋代さんが、転機になったと感じている記事は、昨年6月に始まった連載企画『未来は音楽が連れてくる』だ。

 元々、筆者の榎本幹朗氏(音楽コンサルタント)を人づてに紹介された屋代さんは「最初は知人を通して特段やる気もなく原稿を見ただけだったが、『こりゃすごい』と思い、すぐに会いに行った」と振り返る。

 榎本氏は、音楽市場が衰退していくなか、音楽産業とネットの関係などを構造的に分析。記事のタイトルにも「なぜレコード産業はインターネット放送を潰そうとしたのか」「なぜYouTubeは音楽を救えなかったのか」「メディアが音楽を救うとき」など、刺激的な文句が並ぶ。

 ネットやソーシャルメディアを活用した海外の新たなサービスに精通しており、世界を席巻しているスウェーデン発の定額聴き放題サービス「Spotify(スポティファイ)」を日本で真っ先に紹介したことでも知られる。

 屋代さんは「榎本さんの連載で業界全体が3年ぐらい前に進んだと感じている」と話す。

アーティストに寄り添う

 ウェブが好調になっているとはいえ、今後、収益の柱だった書籍はどうしていくのか。

 実は、ミュージックマンのビジネスモデルでは、紙媒体であることに大きな意味がある。

 というのも、各社の所属部署や担当、電話番号、アーティスト情報まであまりに詳しい情報が載っているため、「ネットにはとても載せられない」のだ。企業側も紙だからこそ情報を提供している部分が大きく、「紙にできることの限界はあるが、紙じゃないとできないこともある。そういう絶妙なバランスの上に成り立っている」と屋代さんは解説する。