トップに立つ人だけが持つ
人を動かす「決断」の極意
私たちメンタリストが集団を相手にパフォーマンスを行う際は、必ずその集団の中で「もっとも疑り深い人」に対してアプローチし、まずその人を信用させることからはじめます。すると周囲は、「あれだけ疑り深い人が信用したのだから間違いない」と考え、その集団は一気に、メンタリストの味方になってしまうのです。
そこにはどんな「心理戦略」が働いているのでしょうか。
この心理戦略は、大衆煽動の基本テクニックです。煽動とはつまり、少数派の人々が巧みな演説や論説を使い、群集心理を操り、大勢の人たちを自分たちの都合のいい状態に導くことです。
自分の部課やプロジェクトチームなどの組織、コミュニティでは、組織に敵になりそうな人や集団や組織内の反抗勢力を見つけた場合、どうやって排除するかを考えるのではなく、どうすれば取り込めるかを考える。これこそが、「組織をもっとも大切なもの(その是非はともかく)」と考えたうえで、その主導権を握り、動かしていく決断の極意なのです。
中野渡の決断こそ、この「組織のトップに君臨する者」が持つビジネスメンタリズムだと言えるでしょう。