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スマートフォンの理想と現実

日本はキャッチアップできるか?
見えてきた通信と放送、サービス融合の近未来

クロサカタツヤ [株式会社 企/株式会社TNC 代表]
【第51回】 2013年9月25日
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NHKも出展 Photo by T.K.

 むしろ日本の場合は、技術よりも社会的な要因による変革の可能性が、大きいだろう。すでに人口減少フェーズに入り、都市と地域の格差が可処分所得とリテラシーの両面で拡大する中、メディアビジネスやコンテンツビジネスの、社会における役割や期待が、根本から問い直されている状況である。

 例えば、一県一局というテレビ局の配置やネットワークが、もはや現実のニーズに即していない可能性は、検討されてしかるべきだろう。しかもこれは単なる合理化の話だけでない。経済圏で見たらもっと広域連合でよいかもしれないが、コンテンツの観点からすれば、むしろもっときめ細かくなければならないのではないか。

 そうした、堅牢すぎる産業構造によって生じているギャップを、テクノロジーがうまく裁定できるとしたら、そこにこそスマートテレビが台頭する可能性があるように思える。すでにKDDIがJCOMとJCNというCATVネットワークを擁し、STBを含めて新たな展開を打ち出そうとしているのも、それを先取りしたものといえるだろう。そしてこうした動きは、同社のアプローチに限らず、もっと多様な展開が考えられるはずだ。

 映像を作って配信するというビジネスモデルと、利用スタイルそのものはそう大きく変わることはないだろう。人間の認知や理解の構造はそれほど大きく変わらないからだ。ただ、それを支える事業構造、産業構造は、社会要因の制約によって結果的に変革を促される状況に来ている。

 IBCを見ていると、テクノロジーやビジネスモデル開発に関しては、すでに海外の方が先んじているところがある。むしろこの領域に関して、日本はキャッチアップする側であり、そうしたソリューションを採用していくことで、新しい映像コンテンツサービスが作られていく可能性は、今年に入ってより高まっているように見える。

 昨年の時点では、そういう実感はなかったが、今年はかなり見えるようになった。これがトレンドなのだとすると、今後数年、少なくとも東京オリンピックよりも前の段階では、新しいコンテンツビジネスの姿が私たちの目の前に現れ、普及し始めているのではないだろうか。そうした実感を抱かせてくれるIBCであった。

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クロサカタツヤ
[株式会社 企(くわだて)代表取締役、慶應義塾大学特任准教授]

1975年生まれ。慶應義塾大学・大学院(政策・メディア研究科)修了後、三菱総合研究所にて情報通信分野のコンサルティングや国内外の政策調査等に従事。その後2007年に独立し、現在は株式会社企(くわだて)代表として、通信・メディア産業の経営戦略立案や資本政策のアドバイザー業務を行う。16年より慶應大学大学院政策・メディア研究科特任准教授。


スマートフォンの理想と現実

2011年はスマートフォンの普及が本格化する年になる…。業界関係者の誰しもがそう予感していた矢先に発生した東日本大震災は、社会におけるケータイの位置づけを大きく変えた。しかし、スマートフォンの生産に影響が及びつつも、通信事業者各社はその普及を引き続き目指し、消費者もまたそれに呼応している。震災を受けて日本社会自体が変わらなければならない時に、スマホを含むケータイはどんな役割を果たしうるのか。ユーザー意識、端末開発、インフラ動向、ビジネスモデル等、様々な観点からその可能性と課題に迫る。

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