先週の世界レベルでの信用収縮とそれに連なる株価暴落ぶりには凄まじいものがありました。その光景を見ていて、私は小泉政権での不良債権処理のときを思い出さずにはいられませんでした。
当時、私は竹中金融担当大臣の補佐官という立場で不良債権処理の渦中にいました。2002年10月に資産査定の厳格化などを決めた金融再生プログラムを発表した後も株価は下がり続け、2003年4月にはバブル崩壊後最安値となる7607円を記録しましたが、同5月のりそな銀行への公的資金注入を契機に反転を始めたのです。
そのときの経験から、今回の世界的な株価の暴落は、どこにどれ位不良債権が溜まっているか分からないという金融市場における相互不信と、本当に必要十分なアクションを起こして金融システムを守ってくれるのかという市場の政府に対する不信という、二つの不信に起因していたと思っています。実際、今週に入ってユーロ圏政府が銀行間取引への政府保障や公的資金注入を柱とした行動計画を採択し、それを踏まえて欧州各国が対策を具体化すると、世界の株価は急騰しました。
欧州に続いて米国政府も最大2500億ドルの公的資金を銀行への資本注入に使う旨を公表しましたので、世界の金融市場は安定すると思いますが、既に株価はかなりの低水準で、かつ米国の実体経済が今後1~2年は後退局面となることから、世の関心はどうしても景気や生活の悪化をどう食い止めるかという短期的な面にばかり行きがちになります。既にマスメディアの論調はそうなっていますし、日本政府も追加的な経済対策を検討し始めています。
アイスランドの一人当たりGDPは
2006年には日本の1.5倍だった
そうした短期的な面も非常に大事ですが、それにばかり目を奪われてはいけないのではないでしょうか。今回の金融危機は様々な教訓を提示しています。
特に注目してほしいのはアイスランドです。アイスランドは“金融立国”を実現してGDPを増大させ、2006年の一人当たりGDPは世界で第3位。その金額(5万3000ドル)は18位の日本の1.5倍以上でした。しかし、その過程でアイスランドの銀行は借り入れを増やし、大手3行の合計借入額はアイスランドのGDPの5倍以上となっていました。そこに今回の信用収縮と株価暴落が直撃した結果、それら3行は国有化され、株式市場は閉鎖され、外為市場に介入した中央銀行の介入資金は一日で底をつきました。