SONYのロゴソニーとTCLはホームエンタテインメント領域において、戦略的な提携に向けた協議・検討を進めることに基本合意した Photo:JIJI

まさかソニーまで中国に――。テレビ事業を分離し、設立する新会社の出資比率の過半を中国TCLが握るというニュースに、ショックを受けた人も少なくないでしょう。かつて技術力で世界を席巻した「日の丸家電」の終焉とも言えるこの決断。しかし、経営学の視点で見ると、これは“敗北”ではなく、驚くべき「復活シナリオ」の始まりかもしれません。なぜソニーは祖業を切り離したのか? 感情的なノスタルジーを捨て、冷徹なビジネスの論理でその真意を読み解きます。(百年コンサルティングチーフエコノミスト 鈴木貴博)

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ソニーのテレビ事業分離に
悲しむ人が知らない事実

 ある意味で歴史的なニュースではないでしょうか。ソニーは中国家電大手TCLと合弁会社を設立し、テレビ事業を分離する。

 日本のテレビ市場シェアは直近でレグザ(旧東芝)が一位、シャープが二位、三位が中国のハイセンス、四位がTCLで、ソニーは五位です。レグザは東芝からハイセンスに売却されましたし、シャープは台湾の鴻海の子会社です。これでソニーのブラビアも中国資本が過半ということになるわけです。

 なぜソニーグループがある意味で祖業ともいうべきテレビを売却するのでしょうか。経営学の観点からは簡単に説明できます。

 大企業が企業価値を高める経営をするためには、投資収益率の低い事業を売却し、収益率の高い事業とポートフォリオを入れ替えるべきなのです。

 ソニーグループの経営陣は株主に対して企業価値を高める責任を持っています。ですから投資がかかるわりに収益性が低いテレビ事業を売却することが経営的に正しいのです。

 そして売却で得られたキャッシュでたとえば収益性が高いアニメのIP(知的財産)に投資をするのが経営的には正解になるのです。

 実はコンサルティング業界には古い笑い話があります。たぶん実話ではないかと思うのですが、2000年代にあるコンサルティング会社がソニーの経営陣に提言したのだそうです。