量子コンピュータが私たちの未来を変える日は実はすぐそこまで来ている。
そんな今だからこそ、量子コンピュータについて知ることには大きな意味がある。単なる専門技術ではなく、これからの世界を理解し、自らの立場でどう関わるかを考えるための「新しい教養」だ。
『教養としての量子コンピュータ』では、最前線で研究を牽引する大阪大学教授の藤井啓祐氏が、物理学、情報科学、ビジネスの視点から、量子コンピュータをわかりやすく、かつ面白く伝えている。今回はスーパーコンピュータと量子コンピュータの進化について抜粋してお届けする。

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コンピュータ界のアカデミー賞

中国はスーパーコンピュータ「神威・太湖之光」を用いて量子コンピュータを304秒でシミュレーションできると発表した。

一台の冷凍機内の量子コンピュータ(数十キロワット)とスーパーコンピュータ(数十メガワット)では、消費電力が1000倍も違うとはいえ、「スーパーコンピュータでは一万年かかる」といわれていた計算が、飛躍的な性能の向上とシミュレーション技術の発展によって、一気に量子コンピュータレベルまで追いついた。

この成果は、コンピュータ分野のアカデミー賞とも呼ばれる「ゴードン・ベル賞」を2021年に受賞している。

中国の躍進が止まらない

スーパーコンピュータによるシミュレーションにとどまらず、中国チームはの超伝導量子ビットを用いた60量子ビット級の量子コンピュータを2021年に開発し、量子超越実験を発表した。

中国はアメリカに並ぶスパコン所有国となると同時に、量子コンピュータにおいても国を挙げた巨額の投資をし、アメリカを追い抜く勢いで研究を進めている。

光方式にも大注目

超伝導量子ビット方式以外にも、中国のグループやカナダのベンチャー企業ザナドゥ社(Xanadu)などが光方式の量子コンピュータで量子超越実験を発表している。

ザナドゥ社は2022年に論文を発表すると同時に、アマゾンウェブサービス(AWS)のクラウドサービスを通じて量子コンピュータを公開した(現在このマシンはAWSからは公開されていない)。

発展途上にある最先端の研究成果を全世界に公開し、ユーザーに面白い使い方を考えてもらおうというオープンイノベーションの取り組みだろう。

(本稿は『教養としての量子コンピュータ』から一部抜粋・編集したものです。)