鳩山政権が発足して1ヵ月が過ぎた。初の所信表明演説を前に、大方の人事も固まり、ようやく全体像もぼんやりと見えてきた。

 あくまで筆者の主観にすぎないが、政権は、緩やかな三層構造になっていると考えている。

 ピラミッド型で喩えるならば、第一層目の最上部が「官邸」、中層の二層目が「内閣」、基盤となる最下層の三層目が「党」といった具合だ。

鳩山首相が「官邸」を
ファミリーで固める理由

 ピラミッドの頂点の官邸は、「鳩山ファミリー」ともいうべき人物たちで固められている。

 中核は、官房長官の平野博文氏。就任前から鳩山首相の信頼も厚く、政治的な陰の役割を果たしてきたといわれる。同じく政策面に強い松井孝治官房副長官も、官邸の陰の司令塔のひとりだ。

 ところが、昔からのファミリーとなると、彼らとは別の政治家たちの名前が挙がる。まずは、松野頼久官房副長官。松野氏は鳩山首相にとって、側近中の側近ともいえる人物だ。

 半世紀前、鳩山首相の祖父の鳩山一郎氏にも「鳩山ファミリー」と呼ばれる側近議員グループがあった。河野一郎氏、三木武吉氏らと並んで、その中には松野鶴平氏の名前もあった。

 鳩山一郎を支えた鶴平氏の孫が松野頼久氏である。さらにその父である松野頼三氏は、首相の母方の実家であるブリヂストンともビジネス上の関係の深い政治家である。

 つまり、松野家は、鳩山家と三代にわたって交流してきたのだ。ちなみに、鳩山家の家訓ともいえる「友愛」という言葉は、松野家でも愛用されている。

 内閣総理大臣は孤独な職業である。就任2日目には、鳩山首相自ら、「こんなところにいると情報が入らず、息が詰まるようだ」と漏らしたというのも頷ける。

 そういう意味でよき相談相手は不可欠で、松野副長官のような人物が近くにいる意味は決して小さくない。精神安定剤的な役割もあるのだ。