「裁判官」の恐るべき破壊力を知る
こうして感情をまっすぐぶつけられたことで、私の内なる「裁判官」を守っていた硬い殻についにほころびが生じた。一瞬のうちに、自分が生まれてこのかた、あらゆるものを「裁判官」の眼で見ていたこと、あらゆるものを善と悪に分け、あらゆるものに白黒をつけていたことに思いあたった。
そしてそれが子ども時代、人生を予測可能で対処しやすいものにするために身につけた、自己防衛の心理プロセスであることにも気づいた。その日、11人のクラスメートと円陣を組みながら、私は自分の頭の中にひそんでいる、その存在にすら気づいていなかった「妨害者=裁判官」の恐るべき破壊力を知ったのである。
この発見ですべてが一変した。私は再び、幸不幸、成功不成功を左右する心のメカニズムの探求へと向かった。そしてやがて、互いに関連する二つの心の力学に注目するようになった。
1. 自分の心が自分の最大の敵であり、私たちの心の中には私たちの幸福や成功を意図的に妨害するいくつかの人格が隠れているということ。そしてこれらの妨害者を見つけ、弱めるのは決して難しくはないこと。
2. 心の中の偉大な知恵や洞察力を活用するための脳の「筋力」は、長年使わなかったせいで衰えていること。こうした脳の「筋力」は簡単に鍛え直すことができ、心の奥底にひそむ知恵や未開発の精神力をもっと活用できるようになるということ。
この二つの力学の一方ないし両方に基づいたエクササイズを行えば、比較的短期間にPQを大きく向上させることができる。そしてその結果、仕事においても家庭においても、能力や幸福度が劇的に改善するのである。