踏切内の高齢者を助けようとした村田奈津恵さんが犠牲になった横浜市の踏切事故、有名タレント・桜塚やっくんが命を落とした中国自動車道の高速道路事故。10月に入って間もなく、痛ましい自動車・鉄道事故のニュースが相次いだ。これは他人事ではない。事故は我々の一瞬の心の隙を突く。これらの事故から、私たちはどんな教訓を学ぶべきなのか。秋も深まり、高速道路を使って自動車で遠方へ行楽に出かける人、年末を控えて飲み会が増え、ほろ酔い気分で駅のホームを歩く人も増える。常日頃から心得るべき「リスク回避法」を、専門家の意見を基に検証する。(取材・文/プレスラボ・小川たまか)

目前に自動車や電車が迫ってきたら
村田さんとやっくんの事故死の教訓

 もし道路や踏切内で目の前に自動車、電車が迫ってきたら、どうする――。あなたは普段、そんな光景を想像することがあるだろうか。

 夏の暑さが残る10月初旬、悲しい事故が相次いで起こってしまった。

 10月1日に横浜市のJR横浜線・川和踏切で起こった事故では、村田奈津恵さんが亡くなった。村田さんは父親と一緒に自動車に乗り、踏切前で停車していたところ、踏切内に横たわろうとする高齢の無職男性を目撃。「助けなきゃ」と、父の制止を振り切って踏切に入った。

 村田さんが男性をレールとレールの間に移動させたことにより、電車は男性の上を通過。助かった男性は鎖骨骨折の重症ながら、命に別状はなかったという。

 事故が報道されると、ネットでは村田さんの行動を称賛し、追悼するコメントが書き込まれた。6日に行われた葬儀では、安倍晋三首相名の感謝状と紅綬褒章が贈られ、警察庁も警察協力章を贈ることを発表した。報道では、村田さんは心優しく、困っている人を放っておけない性格だったと報じられている。

 また10月5日には、お笑いタレントとして活躍し、最近は女装バンドの活動を精力的に行っていた桜塚やっくん(本名:斎藤恭央さん)が、山口県美祢市の中国自動車道下り線の事故で亡くなった。バンドメンバーを乗せた車を自ら運転していたところ単独事故を起こし、車外に出たマネジャーと桜塚さんが後続車に轢かれたのだ。