2007年10月10~11日に開かれた日本銀行の金融政策決定会合は、市場の予想どおり現状維持で終わった。票数は賛成8、反対1だった。水野温氏審議委員が7月から4回連続で0.25%の利上げを主張している。
福井俊彦総裁は10月11日記者会見で、水野委員は「利上げの判断を先送りすれば、ファンダメンタルズから離れた金利水準を長く維持することになりかねない」と考えていると解説した。水野委員の判断を尊重しているようにも見える。
とはいえ、日銀政策委員会全体のトーンは9月会合時とあまり変わっていない。米国経済に関しては、先月よりも不確実性がやや後退したと見ているようだ。
しかし、欧州経済に対して感じている不透明感はやや強くなっているだろう。欧州金融市場の混乱が企業金融に悪影響を及ぼし始めている恐れがある。ECBの金利運営は当面は現状維持と思われるが、次のアクションは利上げではなく、利下げかもしれない、と思い始めた日銀幹部は多いだろう。
インフレに関して福井総裁は「そう遠からずCPI(消費者物価指数、生鮮食品を除く)はプラス基調で推移していくようになる」と話している。11月あたりから前年比で若干のプラスに転じると見ているように思われる。携帯電話の通話料金引き下げに関しては、「携帯端末を新しく買わなければ通話料も下がらない」ため、影響はニュートラルだという。
国内経済については、「息の長い成長を続けていく蓋然性が引き続き高い」とする。しかし、10月の地域経済報告では、3地域の景気判断が下方修正された。また、10月の日銀金融経済月報では、9月に引き続き、1人当たり名目賃金について「このところやや弱めとなっている」と表現されている。中堅中小企業の特別給与(ボーナス)が減少している点が意識されている。
しかし、今のところ日銀は「企業の直面する海外需要は堅調さを維持している」と解釈しており、中堅中小企業も含め、生産は10~12月に増加していくと予想している。中国、インドなどを中心とする新興諸国の内需は今のところ旺盛である。米国・欧州経済の先行きの減速が限定的であれば、世界経済の失速は回避される。そのシナリオ実現の可能性が高まってきたと政策委員会がいつ判断するのかがポイントとなる。
早ければ12月19~20日に開かれる金融政策決定会合で0.25%の利上げが決まる可能性はあるだろう。しかし、海外経済の先行きが見えにくければ年明け以降に延びるケースもありうる。
(東短リサーチ取締役 加藤 出)
※週刊ダイヤモンド2007年10月27日号掲載分