「まだ30代だから老眼は関係ない」――そう思っていませんか。実は、はっきり見えにくくなる前から、目の老化は静かに始まっています。夕方になると目が重い、頭が痛い、その不調の正体は“かくれ老眼”かもしれません。放置すると老眼を一気に進めてしまう危険な対処法も存在します。話題の書籍『100歳アイ』より、30代から知っておくべき目の変化とそのメカニズムを解説します。

【かくれ老眼】30代で始まる“見えにくさ”の正体とこの時期に起きる最初の自覚症状とは?Photo: Adobe Stock

30歳代で訪れる「かくれ老眼」にご用心

 30~40歳代になるとほとんどの人が近くの見え方に問題を抱え始めます。仮に小さな文字が見えない、といったはっきりとした自覚症状はなくても、目の疲れを感じやすくなるこの時期の状態を、私は「かくれ老眼」と呼んでいます

 遠近のピント合わせを担う水晶体は年齢とともに硬くなります。もともと水晶体は弾力があり、ぷっくりと丸みを帯びた形をしています。この丸みを帯びた状態が、近くにピントが合った状態です。水晶体の周囲には毛様体筋という筋肉があるのですが、この毛様体筋はリラックスして細くなっているときに水晶体を周囲からぎゅーっと引っ張り、薄く平らな形=遠くにピントが合う状態にしています。毛様体筋が「休め」の状態が、遠くにピントが合う状態です。

 近くを見ようとすると、毛様体筋が緊張して太くなり(力こぶのような状態だと思ってください)、水晶体を引っ張る力が緩みます。すると、水晶体は自らの弾力でぷっくりとした状態=近くにピントが合う状態に戻ります。

 つまり、人の目は遠くを見るときにはあまり筋肉を使わず、近くを見るときほど筋肉を使っているということ。これは私たちの祖先が自然の中で暮らす上で、手元よりも遠くからの危険に備えておく必要があったからだといわれています。

水晶体は少しずつ確実に硬くなっていく

 そして、水晶体は細胞が入れ替わったり再生したりしないため、同じ1枚(両目で2枚)を使い続けるしかありません。水晶体は年齢を重ねると少しずつ硬くなり、元のぷっくりとした形(=近くにピントが合う状態)に戻りにくくなってしまいます。

 水晶体が硬くなると、周囲から引っ張る力をより大きく緩めなければぷっくりとした状態に戻ってくれません。近くを見るためにはどんどん毛様体筋を酷使することになり、最終的にはいくら毛様体筋ががんばっても、弾力性を失った水晶体は平べったいまま。近くにピントを合わせることはできません。現代の医学では水晶体を軟らかくすることができないので、目の老化は誰にも避けられないのです。

 水晶体はあるとき突然硬くなるわけではなく、生まれたその日から、少しずつ確実に、ほぼ同じペースで硬くなっていきます。10~20歳代ではまだ近くを見る力に余力があるため実感することは少ないのですが、30歳代になると普段は感じなくても、近くを見る力はかなり落ちてしまっています。

30代、最初に起きる自覚症状とは?

 この時期に起きる最初の自覚症状が、「夕方になると目が疲れる」という状態です。現代人の生活は近くを見ることが圧倒的に多く、水晶体が硬くなってきた目で近くを見るためには、毛様体筋は常に緊張し、パンパンに膨らんだ状態を強いられます。

 毛様体筋は胃や腸と同じ「平滑筋」と呼ばれる種類の筋肉なので、筋肉そのものの痛みや疲れを感じることはありません。しかし、目の周囲にある「三叉神経」という神経は、毛様体筋が緊張し続けていることを感知し、「目の奥が重い、痛い」という感覚を脳に伝えます。三叉神経はおでこ全体にも広がっているため、目だけでなく、頭痛として感じ取ってしまうこともあります。

 これが、いわゆる「疲れ目=眼精疲労」です。目の奥がズーンと重い。頭もだるくて痛い、とてもつらい状態です。

 そう、30~40歳代の方が感じる「疲れ目」の多くは、単に「目が疲れている」のではなく老眼の初期症状。体のほかの部分は細胞がどんどん入れ替わるのに対し、水晶体は老化する一方ですから、全身の中で最も早く、そしてはっきりと、まさに「目に見える」形で老化が現れるのです。