利益成長と株主還元を目標にした新たな中期経営計画を、2013年度にスタートさせたアサヒグループホールディングス(HD)。だが、その成長目標は、決して低いハードルではない。
7月16日。アサヒグループHDの株価が年初来高値2793円をつけた。バブル期の1989年9月以来の最高値だ。この2月に新中期経営計画を発表し、それに基づき行った3月の300億円の自社株買い以降、株価は上昇基調だ。
2015年度を最終年度とした中計で目標数値とされたのは、ROE(株主資本利益率)とEPS(1株当たり当期純利益)。12年度に8.4%だったROEを15年度に10%に、12年度に123円のEPSを毎年平均10%以上伸ばし、15年度までに163円以上にする(図(1))。さらに、15年度までの配当性向、自社株買いも含めた総還元性向の目標も示した。
前年度アサヒは株式市場から、景気に業績が左右されず高成長は見込めないが利益はコンスタントに稼ぐ、いわゆるディフェンシブ銘柄の代表格とみられてきた。海外M&Aを繰り返しPER(株価収益率)がピーク時に121倍にまで達したキリンHDと比べ、アサヒのPERは12年度までの最近5年間、13~16倍にとどまったことにそれは表れている。
中計によって市場の見方は変わったのか。中計を分析してみよう(図(2))。13年度当期純利益655億円が予想通り達成され、さらに3年間、当期純利益の年平均成長率7%という中計の目標が達成されると、15年度の当期純利益は750億円となる。同様に、年平均成長率3%の売上高は1兆8279億円、年平均成長率6%が目標のEBITDA(のれん償却前営業利益+減価償却費)は2093億円。営業利益率の目標は8%だから、営業利益1462億円が15年度末の姿だ。