GSKの飲料事業買収を発表する鳥井社長。80年の歴史を持つ老舗ブランドだが、英国以外での市場の成長と開拓が欠かせない
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 サントリー食品インターナショナルは9日、英国の製薬会社、グラクソ・スミスクライン(GSK)の清涼飲料事業を2106億円で買収すると発表した。スポーツ飲料・エナジードリンクの「ルコゼード」、果汁・濃縮飲料の「ライビーナ」のブランドと関連資産で、約797億円の売り上げ規模を持つ事業だ。サントリー食品にとっては、2009年に約3000億円で買収したオランジーナ・シュウェップス以来最大の案件となる。

 サントリー食品は、20年までに売上高2兆円を目指す中期経営計画を発表している。鳥井信宏社長は「既存事業の成長以外に、5000億円程度を戦略投資によって上乗せする」とM&Aへの意欲を以前から示しており、注目が集まっていた。買収資金には7月の上場時に調達した約3300億円のキャッシュの一部を充当するため、買収後のD/Eレシオは0.5倍程度に収まる見込みという。

新興市場の開拓がキーに

 今回の買収は、サントリーの国際事業の“欧州偏重”を結果的にはさらに強めることになる。12年度時点での国際事業の地域セグメント別内訳はオランジーナ分の欧州が売上高ベースで約60%、営業利益ベースで約70%で、サントリーの海外事業は実質的には欧州事業で成り立っているとも取れる。今回の買収が完了し連結対象に加えられると、同社の国際事業の売上高は12年度比で26%増加する計算になるが、その中でも欧州比率はさらに上がることになる。

 英国は欧州2位の飲料市場規模を持ってはいるものの、市場の成長率は年率2.7%と日本国内と大差ない。現に、ルコゼードは英国国内ではスポーツ飲料・エナジードリンクカテゴリーでシェアトップではあるが、売り上げは前年比ほぼ横ばいで推移している。また、ライビーナに関しては果汁・濃縮飲料のシェアは3%で4位と、そもそもあまり振るわない。

「EBITDA(利払い前・税引き前・償却前の利益)で約1億ポンドの事業に対して13億ポンドの買収価格は、安くはないがそれほどクレイジーな価格でもない」と鳥井社長は言うが、実際にこの買収の評価を決めるのは、現在77%を占める英国以外での今後の事業次第になりそうである。