前回まで、何をストレスと感じるかには個人差があり、同じストレッサー(ストレスの原因)にさらされても、ストレスと感じるか感じないかに、個人差があると書きました。しかし、いくら個人差があると言っても、経験したことのないような大きなショックが来たときは、誰でもビックリするものです。

 未経験の大きなストレッサーにさらされた直後を「ショック期」、それに対して心臓がバクバクするといった身体症状が出るのを「警告反応期」、そして、そのストレッサーに対して抵抗力が高まっていく時期を「抗ショック期」と呼びます。誰しもこうした段階を経て、ストレッサーに対して強くなっていくのですが、この段階の長さに個人差があり、なかなか「抗ショック期」に到達しない、つまりストレッサーに慣れることができない人がいます。

 もし、ストレッサーがいつまでも消え去らなかったり、どんどん激しくなっていくとしたら、どうでしょう。

 例えば大地震が起こって、余震が繰り返され、いつまた大きな地震がくるかもしれないといつもビクビクしていることを想像してみてください。「抗ショック期」の個人差が出てきます。抵抗力を強めようとしても、なかなか意識がついていかない。まして、地震のあとに津波、建物の炎上、道路の陥没などと、二次災害が起こってくれば、人間の身体は、常に戦闘体制になっていなくてはいけませんから、「警告反応期」が長く続き、「抗ショック期」に到達しないうちに、くたびれ果ててしまいます。

ストレッサーの攻撃で
悲鳴をあげる身体

 このように、あまりに長い間、多種の大ストレッサーの攻撃が続くと、人は自分の抵抗力に限界を感じるようになり、「疲弊状態」に陥ります。

 「介護体験」はどうでしょう。介護の経験が全くなかった人が、あるときからそれを余儀なくされるようになり、被介護者の容態はどんどん悪くなっていく。介護者がしなければならないことが次々に増えていく、これは上に書いた大地震と同じです。ストレッサーが増し、抵抗力が追いつかなくなり、ストレスが身体的障害となって姿を現してくる。