別れの悲しみを乗り越えるクリエイティブな儀式
クリエイティブな儀式をデザインする上で課題となるのは、限られた時間でどのように人の感情を動かし、困難を乗り越えるきっかけを作るのかということです。メイカさんにインタビューをして聞いてみました。
「問題をあえて強調することです。コアを見つけて、何が痛みをもたらしているのか、もう一度しっかり見つめるのです。一瞬それで、もっと痛みを感じるように思えます。確かにそうです。ただ、じっくりと見つめることで傷が癒えるのです」
そしてメイカさんが以前、祖母を亡くされたときにデザインした儀式について話して下さりました。
「祖母は96歳でこの世を去りました。彼女はいつも真珠のネックレスを身につけていました。会う度に従兄弟たちの近況を話してくれていたので、彼女が普段会えない私たちを近づけてくれていた存在でした。
亡くなってから、その真珠のネックレスをもらえないか周りに聞きました。それは祖母を思い出すもの。彼女が糸で私たちが彼女にとっての真珠だったのです。
お葬式では100人ほど集まり、その中で私は大きなハサミで祖母のネックレスを切るという儀式をデザインしました。糸で繋がれていた真珠は器にこぼれ落ちました。
皆、そのときは感情的になりました。私が亡くなった祖母のネックレスを切ってしまったので、怒りだす人もいました。それでも私はこの真珠のネックレスがいつか忘れられて置き去りにされるよりも、このようにすることがずっと意味があることだと思ったのです。
バラバラになった真珠は皆が一つずつ持ち帰り、糸は美しい袋にいれて祖母の棺の中に入れました。私はそれが人々の心の中で育つ思い出にしたかったのです。糸が真珠を一緒にしてくれた。糸は亡くなって、真珠はあちこちに散らばってしまったけれど、いい事も悪い事もこれで思い出すことができるのです。
怒りは悪いことではありません。一番感情的になった人こそ、心に残る思い出ができるのです。クリエイティブな儀式は、あとになって物語として語られます。これで別の視点から物事を見れるようになるのです。実際、儀式のあとで時間が経ってからその効果を実感して感謝の気持ちを伝えてくれる人は多いのです。
人は自分の行動は正しいことだと思っています。人の気持ちを刺激することは悪い事ではありません。私は儀式で人に強制をするつもりはありません。批判的になっても良いのです。なぜなら、それで物事は動くからです。人生は、議論をして動いていくのです」