音楽著作権の処理に関して東京高裁が、JASRAC(日本音楽著作権協会)が放送局と結んでいる包括契約は新規参入を阻害していると判断し、独禁法違反ではないとした公正取引委員会の審決を取り消しました。しかし、この高裁の判断は疑問と言わざるを得ないのではないでしょうか。
「公取委の審決取り消し」までの問題の経緯
経緯を簡単に説明しますと、音楽の使用料を利用者から徴収する著作権管理業務は、かつて長くJASRACが独占してきましたが、2001年に著作権等管理事業法が制定され、民間事業者の新規参入が可能となりました。
ところが、放送局の楽曲使用に伴う著作権使用料の徴収については、曲を使った回数や時間を問わず各局の放送事業収入の1.5%を使用料として徴収するという包括契約方式を採るJASRACのほぼ独占状態となっており、新規事業者はなかなかこの牙城を崩せていません。
そうした中、新規参入者の1つであるイーライセンス社が、この包括契約は新規事業者の放送局とのビジネスへの参入を妨害していると公正取引委員会に訴え出ました。すると、公取委は2009年には一旦JASRACに排除措置命令を出したのですが、不服申し立てによる再審判の結果、2012年にはこの命令を取り消しました。
この審判結果に不服なイーライセンスが、東京高裁に公取委の審決を取り消すよう訴え出たところ、高裁が公取委の判断を覆したのです。そして、この事実を報道する新聞記事を見ていますと、JASRACは競争が導入された著作権管理事業の市場で未だ98%のシェアを維持しているとか、放送局がコスト削減のためにJASRAC管理以外の楽曲を使うなという内部指示を出していたとか、高裁の判断が正しいかのような論調で埋め尽くされていました。
しかし、そもそも高裁の判断は正しいのでしょうか。私はまったくそう思いません。むしろ疑問だらけに感じます。