近年、ビジネスマンの間で増えてきている健康トラブルの一つが過敏性腸症候群(IBS)。特に20代~40代の男女に目立っているようです。
検査では特に異常も見られないのに下痢や便秘、腹痛に繰り返し襲われる――。これがIBSの特徴です。同じ腸のトラブルである潰瘍性大腸炎やクローン病ほど重篤ではないものの、ひっきりなしに襲ってくる不快な症状を抱えている人にとっては深刻な悩みです。
IBSの主な原因はストレスと考えられています。排便は自律神経の副交感神経に支配されていますが、過剰なストレスを受けると自律神経のバランスが崩れ、その働きが狂ってくるのです。
ストレスとは、言い換えれば心の問題。そこで、効果的な治療法として浮上してくるのが漢方治療です。
長年、西洋医学と漢方医学の両面から臨床に取り組んできた福澤素子医師(表参道福澤クリニック副院長)は、こう言います。
「もともと漢方や、その源である中医学の治療法は心身一如といって“心と体は一つ”という概念に根ざしています。ですから、ストレスが根っこにあるような体のトラブルは最も得意とするところといえるのです」
漢方薬は同じ病気でも“証(人それぞれの体質や状態の違い)”によって処方が異なってくるので、本来は漢方専門医にかかるか、漢方認定薬剤師に相談するのがベスト。ただ、なかなかその暇が……という人に「まず一度試してみる価値は十分」と、福澤先生が推奨するのが桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)という漢方薬。
「下痢、便秘のほか腹痛や冷えなどIBSのあらゆる症状に有効で、これなら証に関係なく効果が期待できます。副作用も心配しなくて大丈夫でしょう。」とのことで、先生もIBSの第一選択肢としてよく用いているとか。お困りの方は、まずこちらを試してみるのも一手です。
竹内有三(医療ジャーナリスト)