「そろそろ回復するのではないか」。業界関係者のあいだで、こんな期待が高まっているのが、マンションの販売市場である。
期待したくなるのも無理はない。2009年の首都圏での新規販売戸数(年間供給)は08年に比べ、16・8%減の3万6376戸(不動産経済研究所調べ)。なんと17年ぶりの4万戸割れとなり、「バブル崩壊以降で最悪の年」(業界関係者)だったからだ。ピーク時(2000年)の9万5635戸に比べ、約38%の水準である。「現在は底」と思いたいのが、心情でもあろう。
もっとも、明るい兆しはある。
不動産経済研究所のデータでも、09年の首都圏での新規契約率(その月の新規供給分の契約率)は、月間平均が69・7%と前年を7ポイント上回り、好調に転じたとされる水準の70%に近づいた。12月末の販売在庫も7389戸と前年比5038戸の減少。供給過剰状態は脱し、今年の新規販売戸数は約4万3000戸、18・2%増加と予測している。
さらに、省エネルギー住宅建設などへのエコポイント制度のほか、住宅資金に関する贈与税の非課税枠拡大も“追い風”だ。
そして、業界でささやかれているのが、“マグマ説”だ。マグマとは、市況が悪いために買い控えているという購入意欲の高い潜在顧客。これら潜在顧客は業界推定で10万~20万世帯と見られ、「一気に3兆~4兆円のおカネが動く」と予想されている。
実際、中古マンションは品薄状態になっており、新規マンションでも「モデルルームの訪問客が増えつつある」という声も多い。
早ければ、「3月には好転する」という見方もあり、“切望”ともいえる期待は、高まる一方である。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 山本猛嗣)