今週の音盤は、21世紀の歌姫アリシア・キーズが2005年に発表した初のライブ盤「アンプラグド」です(写真)。

 8年前の作品ですが、今聴いても新しい魅力に溢れています。傑作です。

 アリシア・キーズは、低音から超高音に至る個性的な声と素晴らしい歌唱力を持った歌手です。それに自ら作詞作曲をします。ピアノの腕も相当です。トータルな音楽家としての非凡な才能があります。

 しかも最近では映画にも出演するほどの美貌の持ち主です。

 その上、16歳にして飛び級で名門コロンビア大学に進学する明晰な頭脳の持ち主ときています。音楽の神様ミューズは不公平なのかもしれません。一人の女性に全てを授けたのですから。

 要するに、スーパーウーマンです。

 で、そんなスーパーウーマン24歳がMTVのアンプラグドに出演します。2005年7月4日、米国の独立記念日。ニューヨークはブルックリンでの実況録音です。

実況録音はアーティストを丸裸にする

 現代の音楽産業は、最新のデジタルテクノロジーなしには成り立ちません。

 まず伴奏です。ドラム、ベース、和音など伴奏の基本的なトラックはコンピュータの打ち込みでできます。生音を使う管楽器やギター等も必要に応じてコンピュータ上で加工できます。

 次に歌の録音です。満足できるまで何度もテイクを録り直します。それぞれのテイクのベストなところを繋ぎ合わせて完成します。音程やリズムの微妙なズレは簡単に修正できます。完璧に修正し過ぎると不自然に聞こえるので、ある程度不正確なまま残す方がリアルだと判断すればそうします。

 楽曲は、そうやってスタジオで制作され、市場に出荷されます。今や、主な市場はサイバースペースです。音楽は厳格に管理された電子データ商品?かもしれません。