投資信託を売却するべき7つのケース

 投資信託は中長期で運用するのに適した金融商品ですから、基本的には当初の運用計画を無視して途中で投資信託を売却することは好ましくありません。ただし、場合によっては途中で売却に踏みきったほうがよいこともあります。途中売却を検討すべきケースは、主に次の7つです。

《投資の目的が変わった》
 投資信託を購入する際は、自分の投資目的に見合ったものを選ぶことが何よりも大切です。とはいえ、ときに目的は変わるものです。目的が変われば、投資先も変えなければならないことがあります。

 たとえば、「8年以内にマイホームを手に入れる」という目的のために運用を始めたけれど、途中で事情が変わって「このまま賃貸住宅に住むかわりに、いまから定年退職後の生活資金を蓄えることにしよう」と考え直したとします。そうと決まれば、運用期間はこれまでよりもずっと長くなりますから、よりリスク・リターンの大きい株式型投資信託の比率を高めたほうがよいことになります。

《投資信託の運用方針が変わった》
「安心・確実な投資信託だと思って購入したのに、実はインターネット関連株に集中投資をしていた。基準価額がこんなにも激しく上下するとは思っていなかった……」。

 購入前に商品の特徴を十分に検討しているはずですが、場合によっては期待とはかけ離れた運用方針の投資信託を誤って購入してしまうことがあるかもしれません。あるいは、ファンドマネジャーの交代などにより運用スタイルが突然変更されて、自分には不向きな投資信託に変わってしまうこともまれにあります。このようなときは、6ヵ月を目安に運用状況を注意深く観察し、思わしくない成績がつづくようならほかの商品に乗り換えましょう。

《期待に応えてくれない》
 投資信託は運用期間が長くなるほどパフォーマンスが安定してきますから、運用開始から1年以内ならば、たとえ運用成績がふるわなくてもそれほど心配する必要はありません。しかし、2年、3年……と時間がたっても相変わらずパフォーマンスが低空飛行をつづけているようでは、フラストレーションがたまって精神衛生上よくありません。

 このような場合にはまず、目論見書に記載されたベンチマークやモーニングスターの各カテゴリー平均と比較しましょう。性格の似通った投資信託と比べてみてパフォーマンスが継続して不振のままなら、いったん売却して別のものに乗り換えたほうが賢明です。

 反対に、パフォーマンスがよすぎる場合も売却の候補になります。ある時期のパフォーマンスがほかの投資信託と比べて突出してよいということは、それだけ大きなリスクをとっている可能性があるからです。どうしてそのような高パフォーマンスが出せるのか、月次報告書や運用報告書で原因をつきとめ、「安定運用」という大前提から逸れた運用をしているとわかったら、売却を考えましょう。

《リバランスが必要になった》
 運用をつづけているうちに、パフォーマンスしだいで当初の資産配分のバランスが変わってくる可能性があることは先に説明したとおりです。

 リバランスは、利益を確定しながら割安となっている投資信託を買い増す方法のほうが効率的なのですが、もし新たに資金を追加することが難しければ、パフォーマンスのよい投資信託を一部売却して、パフォーマンスの悪い投資信託を追加購入することになります。

《もつに堪えない!》
「リスク・リターンの大きさはある程度承知していたけれど、あまりにも値動きが激しすぎて夜もおちおち寝ていられない」という人にも、売却をおすすめします。人生の目標を達成するために始めた資産運用が、逆に悩みの種になってしまっているようでは、健全な姿勢とはいえないからです。

《手持ちの投資信託が繰上償還される》
 募集期間と償還日が決まっていることの多い単位型投資信託と違って、いま主流の追加型投信の多くはいつでも購入することができ、償還日もありません。つまり追加型投信は、投資家が好きなときに始めて、好きなだけ持っていられるということです。

 ただし、追加型投資信託でも、あなたの意に反して運用期間終了前に償還されてしまうことがあります。これが「繰上償還」と呼ばれるものです。

 繰上償還されるのは、たいてい運用資金が小さくなりすぎて運用が難しくなった場合です。ただしこのときも、いきなり償還されることはありません。償還日の1ヵ月以上前にまずその旨が公告されますから、そのあいだに類似の投資信託を検討し、適当なものに乗り換えるとよいでしょう。