今、日本で個人が買える投資信託は全部で3376本。しかし、その中で「今、手元にお金がなくても個人が安心して資産を作れる投資信託」は、3376本中、たった9本だけだった!金融業界を20年以上見続けてきたセゾン投信社長が語る、読むだけで「投資信託」のことがすぐわかる、ここだけの話。
投資信託の「人気ランキング」、
「運用成績ランキング」は当てにならない!
投資信託を選ぶ際の判断基準として、「人気ランキング」や「運用成績ランキング」を参考にする人がいます。実際、雑誌などでも、この手のランキングを載せて、今、どのファンドが注目されているのかということを説明したり、そのような記事を元に窓口ですすめられたりします。しかし、正直、これらは何の参考材料にもなりません。
まず人気ランキング。現在の純資産残高や、資金流入額でランキングされており、それはそれで興味深い数字ではあるのですが、あくまでも今、どの投資信託がたくさん売られているのかということを把握する程度に留めておいたほうが良いでしょう。間違っても、人気ランキングで上位にあるからといって、その投資信託を買うような真似はしないこと。人気の高低と運用成績の良し悪しは、全く関係のない話だからです。
ただし、ひとつだけ使えるとすれば、人気ランキングの時系列推移で、どんどん順位を落としていくような投資信託があったら、注意しておく必要があります。人気ランキングがどんどん下がっていくということは、解約によって資金が流出し、その投資信託の「純資産残高」(投資信託の運用総額)の規模が縮小していると考えられるからです。
その意味では、人気ランキングが役に立つこともありますが、基本的に人気上位にある投資信託は、金融機関の「販売力」の結果ともいえるので長期的に良いパフォーマンスが得られるという保証は、どこにもありません。
また「運用成績ランキング」ですが、これも上位にある投資信託を選んだからといって、今後も高い運用成績が期待できるかというと、実はそうでもないのです。
それには2つの理由が考えられます。
まず、投資信託の運用成績は、あくまでも過去の数字であるということ。投資信託の運用成績を示す「騰落率」というものがあります。これは、今を終点とし、過去1ヵ月、3ヵ月、6ヵ月、1年、3年、というように遡って、その間に基準価額がどのくらい値上がり(値下がり)したのかを示したものです。
たとえば現在の基準価額が1万3000円で、そこから1年前の基準価額が1万円だとすると、過去1年間の騰落率は30%ということになります。
このように、騰落率は過去の基準価額からどの程度値上がり(値下がり)したのかを示しており、あくまでも過去の結果です。したがって、運用成績のランキングで1位となったファンドが、将来もずっと1位をキープできる保証は、どこにもないのです。
2つ目の理由は、一定期間中に大きく値上がりした投資信託は、その後、下落するケースが多いということです。特に、中国株式ファンド、インド株式ファンドというように、特定の資産クラス、特定の国・地域に集中投資している投資信託が、運用成績ランキングで上位に来ているということは、一定期間中に、そのマーケットが大きく上昇したことを意味します。
そのまま上昇し続けてくれれば良いのですが、マーケットは常に上昇・下落を繰り返すものですから、どこかの時点で必ず調整します。つまり値下がりします。
したがって、運用成績ランキングで上位に来るほど大きく値上がりした投資信託は、近い将来、逆に値下がりするリスクがある、ということになります。
運用成績ランキングの延長線で言えば、投資信託の評価についても、将来のリターンを保証するものではないということを、頭に入れておく必要があります。
投資信託の評価というのは、過去の運用成績などを判断材料とし、いくつかの角度から、優れた運用が行なわれているかどうかを、特定の評価記号で示すものです。しかし、こういった投資信託の評価も、結局のところ、過去の運用成績をベースにして判断されているものですから、現時点で高い評価を得ているからといって将来の運用成績も優れているとは限りません。
こうした人気ランキングや運用成績ランキングというものは、視覚的にも分かりやすいことから、投資信託を選ぶ際に頼ってしまいがちですが、実際には落とし穴がたくさんあります。
そういう落とし穴を理解したうえで、あくまでも参考材料として利用するのは結構ですが、すべてをランキングに頼って、購入する投資信託を選ぶと、後悔につながる恐れがあることには、十分注意する必要があるでしょう。