説得とは人の心を動かすこと

 一般に、人を動かすことを「説得」と呼んでいる。

 資生堂の名誉会長、福原義春氏は

「リーダーとは人を動かす力のある人に与えられた称号である」

と、述べている。人を動かすためには、人の心を動かさなくてはならない。心を動かすには、人の心がつかめなくてはならない。

 では、いかにして人の心をつかむか。

 人の心は変わりやすい。否定されると、反発したり、すねたりして、手に負えなくなる。説得など、望むべくもない。肯定されると、素直になり、やる気がわいてくる。説得にも応じやすくなる。

肯定的な表現を身につける

 仕事を頼んだが、期待した成果が得られない。そうなると、いきなり、
 「ダメじゃないか」
 「一体、どういうことだ」
などと、否定的な言葉を浴びせたくなる。だが、頭ごなしに否定すれば、人の心は離れていく。ここは、一呼吸おいて、相手の気持ちになって、肯定的に表現してみることだ。

 川上さんは、新聞社でデザインの仕事をしている。あるとき、上司から、金融会社の社内報に用いるロゴマークの図案を考えてほしいと、頼まれた。

 いくつか考えたなかの、一番気に入った案を上司に提出した。

 上司は、
 「なかなかいい案だね。色もきれいだし、素敵だね」
 「ありがとうございます」

 ちょっと間があってから、
 「でも、お客は金融会社で堅いところだから、このロゴだと、幾分派手な気がするんだが」

 言われてみれば、そのとおりだった。